第5章 新たな仲間
ハヨンはもともとはリョンヘではなく、リョンヤンに仕えていた。そしてリョンヤンの命でリョンヘの護衛についている。
今ここにいるのは、ハヨンの本望なのかどうか。
そこがリョンヘの解らないところであり、悩みの種だった。
(彼女は生真面目な性格だ。リョンヤンに頼まれた仕事を全うするためにここにいると考えてもおかしくない。)
他の者が立ち去るのを見送りながらリョンヘは椅子に深く座り直した。セチャンがリョンヘの側にひかえ、ハヨンは壁際に立つ。
(それとあと、ハヨンは俺との友人だ。そこは変わらない。その事が枷となって、リョンヤンの無事を知りたいけれど行けない等ということも無いだろうか。)
リョンヘはここ数日考えないようにしていたことが一気に溢れだしていた。どうやら彼女が側にいることが原因のようだ。
(いけない。こんなふうに何かに囚われていたら、いつか足元をすくわれる。考えるのはその時が来たらにしよう。何しろ今はやらねばならないことが多すぎる。)
リョンヘは顔をあげた。するとハヨンとばっちり視線が合ってしまった。
ハヨンが黙礼する。
(彼女はもう、ここでは俺の部下の一人なのか…)
友人として、時には邪魔な貴族を追い払うために恋人のふりまでした相手が自分にかしずいている。リョンヘはその事に胸が痛んだ
「リョンヘ様。例の老婆をつれて参りました。」
その時そう告げる兵士の声が聴こえる。
「通せ。」
リョンヘは静まり返った部屋でそう命じるのだった。