第5章 新たな仲間
と、そのときあわただしくハヨン達のいる部屋に走ってくる足音がした。みな何事かと顔を見合わせた。そして勢いよく扉が開けられる。
現れたのは伝令を務めるサファンだった。彼は肩で息をしながら皆にこう告げた。
「不審な老婆がリョンヘ様との謁見を希望しております。」
リョンヘが眉をあげる。
「不審な老婆?」
「はい、見たこともない年老いた女でございます。貧しい様子で、リョンヘ様との知り合いとは思えないのですが…」
サファンは困った様子で息を整えた。みなはざわめく。なぜこのような時にリョンヘのもとへ老婆が会いに来るのか?と内心みなそう考えているのが伺えた。
(リョンの時の知り合いかしら…。いや、でも彼は自分の招待をそう易々と暴いたりしない。)
王族というのは何かと恨まれやすい。自分の臣下に明かすならともかく、一国民に明かすことはないだろう。
「わかった。彼女を呼んできてはくれぬか。」
「はっ、お目通りを許されるのですか」
「今は情報もほとんど無く、みな様々なことで混乱している。少しでも何か情報を得れた方がよい。私を指名している辺り、何かあるのだろう。」
「あら、結構肝の据わった王子ね」
隣にいたムニルがそう小さく呟いているのを、ハヨンは聞き逃さなかった。
「護衛は誰をつけましょう?」
今ではリョンヘの補佐を務めているセチャンがそう尋ねる。今では元の護衛役だったハヨンがいるからだ。
(本当は私がしたい…。でも今だと私は完全に回復したとはとても言えない…)
人を護るのがこの仕事。それなのに本調子で無いものが護るなどとんでもない話だ。ハヨンは今の体の状態を憎らしく思うのだった。