第5章 新たな仲間
「…あまり無理はするなよ。何せあんな大きな怪我だったからな。そう言いながらも役目はいくらでも出てくるのが申し訳ないところだが…」
この孟の地は別段大きくもないし、荒れてもいない。王子が執務の傍ら治世を学ぶためにあてがわれた、比較的豊かで治めやすい土地だ。しかし、本格的にここに腰を据え敵の襲撃にも耐えうるようになるにはかなりの人手が必要である。
(一刻も早く治らないと…)
ハヨンは焦燥にかられる。握りしめた拳は少し汗ばんでいた。
「そしてあなたが青龍のムニル殿か」
史実でも王と四獣は友人の関係だ。王族のみが四獣と対等でいられる。
ムニルは顔をしかめ、肩をすくめる。王族にこのような態度を示すものはなかなかいないので、ハヨンたちには物珍しかった。
「そうよ。私が青龍のムニル。その殿ってやつやめてくれない?堅苦しくってしょうがないわ」
心底鬱陶しいとでも言いたげな態度で、ハヨンの周りにいるものは冷や汗をかいている。不遜だと叫びたいのか、激したように顔の赤い者もいた。
しかし相手は青龍。見た目が人間とは言え、自分の主人と同じ目上の者。彼は何とかその衝動を押さえ込んだようだった。
「私達を助けてくれてありがとう。しかし、申し訳ないが、ムニルをもてなせるような余裕が私達には全くないのだ。十分なもてなしが出来ないこと、礼を出来ないことを許してほしい。」
リョンヘはそう頭を下げた。
「いいのよ。私はただの気まぐれで助けたのだし、あなたたち王族の争いも興味がない。ただ単に理不尽に追い出されそうになってたからむしゃくしゃして間に入っただけよ。だから私にはそんな筋合いはないわ。」
とリョンヘの言葉に対して返ってきた言葉は予想だにしていないものだった。