第4章 孟の地
ハヨンはもう一度彼の体を見る。どう見たって尻尾は生えてこないし、角も出ていない。
「私には龍には見えないのですが…」
「…しょうがないわね…」
そう言うと彼は衿元を大きく広げ始めた。
「な、何をする気だっ!」
焦るように隣にいた兵が叫ぶ。
「何って。私が青龍なのを証明するのよ。あら、何かおかしなことを想像したのかしら?悪いけど、私は歴とした男だから。安心して。」
青龍の言葉にみるみる彼は赤くなった。青龍の言葉遣いや顔つきは女性的な雰囲気だ。何だかこうされると申し訳ない気持ちになるのだろう。
(まぁね、彼の言いたいことも何となくわかるけどさ…)
そして青龍は上半身を晒し、後ろを向く。一同ははっとなる。うなじから腰にかけて、うねるような形で鱗が一部分に生えていたのだ。それはまさしく青龍のものと同じ色をしていたのだ。
「私はれっきとした青龍の生まれ変わりのムニルよ。」
そう居直ってから彼はそう名乗った。
「申し訳ありません!そうとは知らず…!」
周りの兵士は急に腰が低くなった。今にも平伏せんとばかりの勢いだ。
「あーあー、いいからそういうの。私、そういう堅苦しいの大っ嫌いなのよねぇ。だから話したくなくてさっきまで青龍の姿のままでいたのよ。」
と虫を追い払うようなしぐさをする。
「あの…」
ハヨンはためらいがちに声をかける。
「あら、何かしら?」