第4章 孟の地
「やーん、やっと来てくれたわぁ。こんなむさ苦しいところ、息苦しかったのよぉ!あなたがいつ来るかいつ来るかと待ってたのよ!!」
と抱きしめられ、ハヨンはその怪力の持ち主がわからないままだった。いつの間にやら正面から抱きしめられ、ぎゅうぎゅうと顔が相手の胸に押し付けられた。その胸の堅さと体の丈から男というのは察せた。
(だ、誰だ…?)
ハヨンにはこういった喋りをする男性と面識がない。しかもそろそろ息が苦しく感じられる。しかし、隙間なく抱きしめられているので、腕を入れる場所もなく、されるがままの状態だった。
周囲もどうやら突然の熱い抱擁にあっけにとられていたが、しだいに冷静になり、
「見たことない顔だな…お前は何者だ?」
と尋ねた。
もしかするとこの孟の役人の可能性もあるので、簡単に「怪しいやつだ!捕まえろ!」とは言えないのだ。
(だけど、この状況なら無礼だと私は訴えていいのでは…!?)
ハヨンはどうにかしろと言い張りたかったが、声にならず、彼の服やらなんやらでもごもごとなるだけである。
「あらやだっ、私を忘れたのかしら?私、あんた達をあの城で助けたじゃないの。」
と、彼がそう不満げに答えたとき、ハヨンはやっと解放された。息を整えて見たが、どうしても会った記憶がない。
すらりとした体つきに長髪を束ね、切れ長の目と、整った眉は女性らしさも感じられるような美しい男だった。
助けに来た者と言えばあの青龍しか思い浮かばない。しかし、彼はどう見ても人間である。
「ま、まさか…青龍、ですか?」
間違っていたら笑い者だが、ハヨンはおそるおそる尋ねた。
「あらそうよ?信じられない?」
青龍と名乗る彼はにやりと笑いながらハヨンにそう問い返した