第4章 孟の地
「なぜ私に声をかけてくださったんですか…?」
かなり親しげに抱きつかれたが、ハヨンには全くの赤の他人で、始めはとてもとまどったのだ。ただ、なぜかハヨンは嫌悪感を抱かなかったし、むしろ懐かしい人に出会ったような気がしたのだ。
(この人が…いかつい人ではないからかな…)
と雰囲気に女性らしさを感じたことを一つの理由として挙げてみる。
「あら、あなたは私の仲間だと思ったからよ。違った?」
「仲間とは…どういう…?」
ハヨンは首を傾げた。この人と自分の共通点を全く見いだせないのだ。
「やだ、あなた四獣の一人ではないの?特徴的な瞳の色だからてっきり…」
そこでようやく合点がいった。ムニルの背中に鱗が生えていたように、ハヨンの瞳が赤いのも、四獣だからだと思われたのだ。ハヨンはぱっとほほを染めた。
「いやいや、そんな恐れ多い…。確かに私はなぜかこんな色の瞳をしていますが、何も力も持っていませんし、変化もできません。」
自分はそのような大したものでないのに、そう思われるのは何だか恥ずかしかった。
「あら…そうなの…。でも、あなたのことは気に入ったし、むさ苦しい中の可愛い花を見つけちゃったから、じゃんじゃん話しかけるわね。」
「はい!喜んで。」
こんなに気さくな人だと、ついついハヨンも相手にのせられてしまう。その上おかしいと思われるかもしれないが、ムニルは何だか年上の女性に話しかけられたような気分になって、全く緊張しない。そして、女官とではこうはいかなかったので、ハヨンは舞い上がってしまった。
(ムニルさんにお姉さんみたいですって言ったら怒られるかな…)
ハヨンはそう思いながら少し微笑んだ。