第4章 孟の地
ハヨンたちはリョンヘに無事到着したことを報告するために、彼の元へと向かう。
ハヨンは燐と滓での都の城とは違う、地方の城に入るのは初めてだった。連れ立つ兵士の後を追いながら思わず周りを見渡してしまう。
立派な装飾などはないが、腕のいい大工が携わったのだろう。壁や床、天井のどこを見ても、繕った跡や、軋む箇所等はなかった。その上孟の少し温暖な気候のためか、窓が多く、風通しのよい城だった。
つい最近見た滓の城は石造りで侵入者は虫でも許さぬような堅い作りとはまた違っていた。
と、何やら人々のざわめきが聴こえてくる。
ハヨン達は思わず足を止めて耳をそばだてた。
「青龍様がおられないぞ!!」
「こちらにも!」
「先ほどまでは中庭におわしたのに!」
そう慌てた声と、複数の物語駆ける足音。どうやら青龍はれっきとした伝説の獣で、皆で崇めるようになったようだ。
最初青龍がついてきたときは、みなどうすればよいか困惑し、尊敬語を使うもの、生き物とみなすものなどばらばらだった。
こうしてみなで違和感なく青龍が同じ立ち位置にいる辺り、みな少しずつこの環境に慣れているのかもしれない。
(青龍は中庭がお気に入りなのか…。それにしてもあんな巨体が急に消えるなど妙だ)
とハヨンが考えていたとき、後ろに不意に気配を感じた。
「誰だ!」
ハヨンが気づかぬうちにこんなにも近くにいるなど、並みのものではない。ハヨンが警戒しそう叫んだ瞬間、何者かに後ろから抱きしめられた。
「んっ!?」
思いもかけぬほどの強い力だったので、一瞬目の前が真っ白になったように感じた。