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華の剣士 2 四獣篇

第15章 駆け引き


「やはり王都にも異変が起こっているのですね…。ところで、あなたは二日前、何をしていたか覚えていますか?」

ハヨンは本題に戻す。ハヨンはこの男から事情を聞き出す以外にも多くの業務が残っているのだ。王都の民の生活の話をする辺り、彼が本当に平民であることは間違いではなさそうだ。医術師のヒチョルは腕は確かだが、基本は街に住み、街の人間しか診察をしない。ヒチョルを知っている貴族など、いるとしてもごく僅かだろう。


「いや…それが恐ろしいことなんだが全く記憶がないんだ。おそらくいつものように城に食材を運び込んだんだと思うんだが、その日1日の記憶が曖昧で…。何かを城の連中から頼まれた気がしたんだが…。それで私を取り調べている男が言うには、私はある王族の人を暗殺しようとしていたそうじゃないか…」


彼の声は震えていて、ひどく不安そうだった。膝の上で握りしめている拳も小刻みに震えている上、顔も青白い。平民の身では王族など雲の上の存在だ。その上神の加護を受け、獣を操る力をもつという、不思議な一族でもある。彼らにとってはそれこそ、神そのものなのだ。


ハヨンの目の前で小さく震えているこの男は、紛れもなくリョンヘたちに刃を向けた存在だったが、この男は相当な衝撃を受けており、肯定するのは憚られた。

「では、あなたは弓は使いますか?」

「弓…ですか。弓は仲間と趣味として狩に行くこともあるので、多少は…。しかしまぁ、仲間の中では一番下手なのですが。」


ハヨンは首を傾げた。彼と先日対峙した際、彼は兵士と何ら遜色ない腕前を見せたのだ。人を操る能力は、人の身体能力さえ変えてしまうのだろうか。ハヨンは不思議に思ったが、そこまで考えてはっとした。

あの王都にいる魔物は、王城を手中に収めるほど力を持っている。それは無理やり作られたものなのだから、当然何人もの人を操っていることは大いにありえる。実際、ハヨンたちを城門で迎え撃ってきた兵士たちは話が噛み合わず、様子もおかしかった。


(もし、次の戦で大勢の人間を一度に操ったら…?そして彼らの身体能力も強めてしまったら…?)


圧倒的に不利だ。ハヨンはこの事実に気づき、ひどく戦慄した。



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