第15章 駆け引き
「たしかに、それが事実なら説明がつかないことも筋が通る。しかし、彼が嘘をついていると言うことも、無きにしもあらずだ。一応引き続き尋問を続けてくれ。ただし、無実の場合もあり得るから、できるだけ容赦しろ。」
「は。」
セチャンはそう部下に指示した。城でも尋問は何回もしたことがあったが、どうしても力ずくにさせてしまうことが多い。今回の件で、ちゃんと尋問の方法も決めなくてはならないな、とセチャンは感じた。
(しかしまぁ、王都に戻れるのはいつのことかわからないが…)
そもそも戻れるかということすらわからない。一生このままかもしれない。
(せめてこの国の謎が少しでも解明されたら、ましなんだが。)
自分が信じてきたものが一夜にして崩れ去る。セチャンは王都から逃亡した日、そんなことを感じた。国の今の状況から、国の成り立ちまで。そんな中、唯一変わらないのは、リョンヘと、その周りにいるものだけに感じられた。
(私はリョンヘ様を幼い頃から見守ってきた…。国内で小さな内乱が起きたとき、共に戦地に赴いたこともあった…。あの方以上に民を思う気持ちが強い者は見たことがない。私は臣下として、リョンヘ様の民として、最期までついていこう。この混乱している国と民を救えるのはきっとリョンヘ様だけだ…)
ますますこの国に異変が起こり、それを感じ取れるようになった今、セチャンはそう誓ったのだった。