第15章 駆け引き
ハヨン達はその後、もと来た道を進む。
「今、私が考え付くのでは、義勇軍の者達には、主に後方支援か孟の入り口を固めてもらう役目を任せようかと思うのだが…。武術の心得のある者は例の山の部隊に参加してもらい、囮である陣にも入ってもらいたい。」
「そうですね…。戦に不馴れだと山での戦は特殊ですから混乱を招きかねません。」
リョンヘの案にセチャンが賛同する。その二人のやり取りを見て、ハヨンは少し歯がゆさを感じていた。
(私は戦場での戦いを知らない…。二人に比べればここで出せる案など限られてはいるけど…。)
ここ最近、己のいたらなさを何度も痛感している。ハヨンは元来勝ち気な性格であるし、己の実力を過小にも過大にも評価せず、きちんと把握している。城の中では期待の新人とされ、実力を認められた後は上司にも目をかけてもらっていた。
しかし、ここではみな忙しく、ハヨンも新人ではなく、一人の兵士として様々なことを求められる。その環境の落差があるため、この事はハヨンの実力不足と言う理由だけとは言えない。
ただ、ハヨンがリョンヘに頼ってもらいたい、力になりたいという焦りからこんなにも悩みを抱える状況となっているのだ。
(私はみんなよりも若い。その分努力で補わないと。)
ハヨンは近頃、自主練習と勉強の時間を増やしている。ただ睡眠時間を削り、ひたすら打ち込むだけでは意味がないこともわかってはいたが、それほど焦っているのだ。
今日の夜は兵法について復習しようと考えたとき、胸騒ぎがした。
(この感覚…!!前にも感じたことがある。)
ハヨンは素早く辺りを見渡した。そう、あれは確か、リョンヤン王子が暗殺されかけたとき、そして崩御した国王が狙われたときにも感じたものだ。
「お二人とも、警戒なさってください。何者かが狙っている気配を感じます。私が合図しますから、その後、全速力で馬を走らせてください。」
ハヨンはどこから見ているかわからない敵に、口の動きを見られないように隠しながらそう囁いた。
一瞬二人とも体をこわばらせたが、その後は手綱をしっかりと握り、いつでも早駆けに移れる体勢になった。