第15章 駆け引き
「私はリョンヘ様は素晴らしい方だと思っております。ですからあなた様について行こうと思い、今ここにいるのです。しかし、リョンヘ様、私はあなたのこういったところが、弱点だとも思うのです。優しさは大事です。しかし、優しさというものも限度があります。」
セチャンはそうまくしたてる。リョンヘはそれを表情1つ変えず、じっと聴いていた。ハヨンはいつもリョンヘに従順な印象だったセチャンのその姿を見て仰天していた。また、これからの二人の雲行きにはらはらしていた。そしてセチャンはさらに言い募った。
「リョンヘ様は王子であらせられます。王族というものは、国の頭です。国を守らねばならないのです。今危機に瀕しているというのに、義勇軍の彼らの意思を拒否してまで優しさを大事にせねばならぬのですか。私は王の優しさとは、民に手を煩わせないと言うことではなく、彼らをどう使うか彼らのことを思いやりながら使うことだと思います。」
そこまで早口で言いきったセチャンは、息継ぎをする間も無かったのか、ほうっと息をつく。そしてリョンヘがどう反応するのかをうかがうようにちらりと彼を見る。ハヨンも部下にここまでもの申されるリョンヘを初めて見るので、いささか緊張していた。
「民をどう使うか、か。なるほど…。私のために犠牲を払われると言うのが一番苦手だと思っていたが、そうだな、王族としての役目を軽んじているわけでもあるな。わかった、義勇軍の者達を仲間に加えよう。」
リョンヘがそう言い、セチャンは次は安堵の息をつく。緊迫していた空気が穏やかに流れ出した。
「ただ、どう義勇軍の者を使うかは少し時間をくれ。やはり無駄な犠牲は出したくないからな。」
「はい…!!」
先を歩き出したリョンヘの後ろを、セチャンがついていく。ハヨンも慌てて後を追った。
これから始まる戦は確かにかなり不利ではある。しかし、全てが絶望的と言うわけではない。こうやってリョンヘを慕うものもいるし、力になりたいと思う者もいる。戦は大変ではあるが、少しでも希望をもって戦いたいとハヨンは思うのだった。