第13章 揺らぎ
「お、おう…」
ソリャは人々に囲まれているリョンヘの姿を、物珍しそうに見ていた。その後も落ち着きのない様子で、ハヨン達と城の中を歩くソリャは、どことなくあどけなさを感じた。
(人との関わり方に迷いがあるし、卑屈になっている様子も所々あるけど、すれてはなさそう…。ああいう環境にいたなら、やけになったって全然変じゃないと思うのに。)
ハヨンはその様子を見て可愛らしとさえ思えた。
(これが母性…?)
とハヨンは考えたが、ないない。と打ち消した。
(あれかなぁ、弟分みたいな関係になれたらいいなぁ。兄弟とかいなかったし憧れてるんだよね。)
と考えながらも、まだどう話しかければいいかハヨンは少し悩んでいた。
「あのね、これからここで分からないことがあったら何でもきいてね。ここは広いから、下手したら迷っちゃうし。」
やや緊張しながら、後ろを歩いているソリャに話しかけた。
「あ、おお。わかった。」
と彼は答える。当初には感じた鋭さが、幾分か和らいでいるようには感じた。
しかし、目線は全くと言っていいほどに合わなかったが。
(お願い、お願いだから目線を合わせて欲しい…!)
赤架にいた頃、あれほど執拗に追い回していたハヨンは、もしやソリャに苦手な女と思われていやしないかと、少し自信がないのだ。
どうか彼に疎ましいと思われていないことを願いながら、次の会話を思いつくべく、頭を回転させる。悲しいことに、ハヨン自身も対人能力に優れているというわけではなく、人並みな程度でしかない。
「じゃー、街のことなら私にきいてね!ハヨンよりも、私の方が街によく行ってるし。また今度、おすすめの小料理屋をおしえてあげるわ。」
ハヨンが困っていることを知ってか、知らないでいるのか、そうムニルが即座にそう言った。ムニルは本当に人との空気を読むのが上手で、彼の存在は本当にありがたい。
「ムニルは街の人気者だからね、赤ちゃんからおばあちゃんまで友達がいる。罪な男よね」
ハヨンは彼の会話に乗って、そう茶化した。
「確かにそうだねぇ。まぁ、わしからすればただの坊主だけどな。」
急に背後からそう声がかかる。ソリャの背後から老婆が現れたのだ。