第13章 揺らぎ
伝書鳩も無事に孟の城についたようで、町に向かう道に入る前に迎えが来ていた。
「皆忙しいのに頼んでしまって悪いな。」
リョンヘはそう迎えに来た兵士を労った。
「とんでもない。王子のお帰りを、皆心待ちにしておりました。」
と兵士は笑顔で答える。見知った人間と穏やかに言葉をかわすのが、こんなにも心安らぐことだったのかとハヨンは身にしみて思った。赤架では怪しい連中と目をつけていた者もいたし、最後の最後にはあのように周りにいた人全員に敵意を向けられたのだから、精神的に疲れることがたびたびあった。
(ソリャはあんなふうに嫌われる日々を過ごしてきたんだよね…)
ハヨンは馬に揺られながら、そう考えた。あんな生活を送っていれば、誰を信じればいいかわからないし、ハヨン達ともどう関わるべきか困惑しているのもしょうがない。
(私が今ソリャとの向き合う中で大切なのは、同情するんじゃなくてソリャの経緯をしっかり理解しながら、ここが安心していい場所だと知ってもらうことかな。)
ハヨンはこれから新たに加わる仲間について、そう結論づけた。その後はこれから起きる戦のことや、孟の民の先行きなどに思いを巡らせる。考えるべき事案は沢山あった。
そうこうしているうちに、孟の城が見えてきた。1週間も離れていないのに、とても懐かしく思える。それぐらいこの城に馴染んできているのだろう。
久々の王子の帰還ということで、表門から馬で入る。リョンヘ達が帰ってくることは皆知っているので、手の空いてるもの達が駆け寄って口々に挨拶を交わす。
「皆ひさしぶりだな。今、帰った。」
リョンヘはそう言って馬から下りて、出迎えの人々の輪の中に入って行く。それにハヨン達もならって、馬から下りた。
馬に乗ったことがないソリャは迎えにきていた兵士と相乗りしていたので、下りるのを手伝ってもらっている。
「ソリャ。私達は一足先に城に入っていよう。かなり今日は動き回ってるし、疲れているでしょ」
ハヨンは近づいて声を抑えながらそう言った。城の人たちは白虎がどんな人物なのか気になって仕方がないだろう。しかし、今の状況でソリャを好奇の眼差しの中に放り入れるのは彼を疲れ笹てしまうと思ったので、目立たず城に戻りたかったのだ。