第13章 揺らぎ
「チェヨンさん…!お久しぶりです。ただ今帰ってまいりました。」
ハヨンは驚きのせいで少し鼓動が速くなったのを感じる。相変わらず武人であるハヨンにも感じられない気配の消し方で、ハヨンは毎度毎度寿命がある縮まったような感覚がする。
「随分と長いことかかったねぇ。あんたが白虎かい?」
ソリャは突然現れた老婆に、動揺を隠さないでいる。
「え、えっと。リョンヘさんとかムニルさんとか、ハヨンさん…もよく言ってるけど、その白虎ってのは一体…。」
「ふむ…。自分のことを知らないようだね?あんたはもっと自分のことを知る必要がある。時間があるようなら、今から教えてあげるよ」
老婆はそう言って、今からわしの部屋に来ないかい?と誘う。と、その時、老婆の鼻がぴくりと動いた。
「おや?なんだか知らないけど、あんた達、随分と汗臭くないかい?」
「そりゃそうよ!さっきまで山をみんなで全力疾走してきたんだから…!それにしても、うら若き乙女のハヨンちゃんやこの美しい私がいるというのに…。っ、汗臭いだなんてっ!無神経ねっ!」
ムニルは老婆に抗議の声をあげた。ハヨンといえば、もともと武人は汗を流し、泥や血を被るものだと考えているので、特に怒りも恥ずかしさも感じていなかった。
(相変わらずムニルとチェヨンさんのやりとりは面白い。)
と笑っていた。
「ということで、汗臭いのが気になるムニルがいるのと、風邪をひくもとを作りたくない私とソリャがいるから、浴場で汗を流して、あったまってきてから、またお話を聴きに行ってもいいですか?」
ハヨンの言葉に、老婆は肩を揺らして笑う。
「わかったわかった。みんなして疲れているだろうしな。わしが悪かった、またおいで。わしはいつでも暇にしておるから、いつでも来るといい。」
「はい。出来るだけ早く、ソリャには事態を知ってもらいたいし、みんなが疲れていないようだったら、今日中に伺います。」
ハヨン達はその場をあとにし、ソリャの自室になる部屋に向かうのだった。