第13章 揺らぎ
「ならば言いましょう。リョンヘというあの逆賊は王族でありながら獣を操る力を持っていない。そんな能無しの王子なんぞに、王位を譲る王などどこに居ましょう?」
リョンヤンの視線に怯むことなく、イルウォンはそう言いながらリョンヤンの座る椅子の背もたれに手をかけた。
「リョンヘは能無しではありません…。もともと幼い頃は私よりも獣を操る才に長けていました。それに、何に関しても人並み以上にできる、優秀な弟だ。」
リョンヤンの答えをイルウォンは鼻で笑ってからため息をついた。
「確かに、彼は優秀な人だった。しかし、今では逆賊となり、この城に二度と帰れぬようになってしまった…。ですが、この事は今は関係ありません。せっかくあなたは今、亡き父上の執務室にいるのに、まだあれの在処の手がかりは見つからないのですか?あれが見つからないのならば、どうなるか前にお話したのですが。」
そのイルウォンの言葉を聴いて、リョンヤンの目には激情の色が映し出された。以前の彼なら、こんなにも荒々しく感情を露にするなど、誰も信じなかっただろう。
「卑怯者。探し当てたらすぐに教えると言ったでしょう。よりにもよって、リョンヘの命を引き換えにするなど…」
あれの在処を早く教えないと、城から追い出したリョンヘを殺しに行く。
その言葉はリョンヤンにとって大きな枷となったのだ。
「卑怯者?言ったでしょう、リョンヤン様。真に国を治めるものは、優しさだけではなく、冷酷さを持てと。本当に力を持ちたいのであれば、私はこんなことは厭いませんよ。」
これ以上言い合っても無駄だと思ったのだろう。リョンヤンは悔しそうに唇を噛み締めながら、黙りこくった。
(これもなかなかしぶといものだ…)
イルウォンは術も効かず、精神的に揺さぶっても効果がないため、リョンヤンは苛立ちの種となっていた。
イルウォンはその場から立ち去り、会議に参加するために別の部屋へと向かう。リョンヤンは病に臥していることになっており、イルウォンが彼の意向を伝えていることにしているので、実質はイルウォンの提案を皆が賛同するという形だけの会議だ。