第13章 揺らぎ
ハヨンとムニルは町に下りて何か町に異変が起きていることを感じ取った。町の人々が慌ただしいや明日で、動き回っている。男は甲冑を身にまとったり、武器を携えたりとものものしい。女達は武器や食料の調達などでほとんど留守だった。
ほとんどの屋台や店が閉まっており、二人はようやく営業している屋台を見つけ出す。
「はいよ。お釣りの五リンだよ。それにしても…あんたら旅人かい? 」
屋台のおかみは、そう言いながらハヨン達を見つめる。どこか怪しまれているような声色で、ハヨン達は困惑する。
「そうなのよ。私達の祖母が風邪をこじらせてしまって。もう祖父はいなくて一人暮らしだし、なんせこの季節だから、見舞いと看病をしに行ったの。」
そうムニルは流暢に嘘をついた。ハヨンはその対応の速さに唖然とする。
(こんなにすぐに都合の良い嘘を思いつくとは…)
しかし、ムニルの話術は巧みなことをハヨンは知っているので、半分呆れ気味でもあった。
「そうなのかい。なら早いとこ家に戻ったほうがいいよ、お兄さん。なんせ戦が始まるからねぇ。」
「い、戦…!?」
思いもよらぬ言葉にハヨンとムニルは同時に叫ぶ。心当たりといえばもちろんリョンヘやハヨン達を追い出した反逆者である。きっと必要な武器などを一通り揃え、邪魔者であるリョンヘ達をたたくつもりなのだ。
青ざめたハヨン達の姿を見て、戦に恐れをなしたと思ったのだろう。おかみは頷きながらこう言った。
「長いこと戦なんてなかったし、そりゃあ怖いさ。でもね、どうやら城で反逆したやつがいて、失敗したけどどっかの町の城をのっとって籠城しているらしいのさ。国と国で戦うのも恐ろしいことだけど、内側で分裂やら戦うなんて、もっと酷い状況だと思わないかい?」
どうやらハヨン達が恐れていたことが現実となったようだった。リョンヘは民達の反逆者とされてしまったのだ。手が震えたが、ハヨンはそれを必死に抑え込む。
「…それは一大事ですね…。すぐに実家に戻ります…」
行こう、とムニルの手を引いて、ハヨンは店を出る。出る間際に、「気をつけるんだよー」とおかみの声が聞こえた。