第13章 揺らぎ
ハヨン達は孟に戻るべく歩いていた。そこには共に赤架の町を出たソリャもいた。はじめのうちはハヨン達が声をかけても、必要最低限しか言葉を返さなかったが、少しずつ言葉数が増えてきたので、ハヨンはほっとしていた。
(私達が敵ではないとは思ってもらえたのかな。あんなに人が信用できずにいたのだから、ちょっとずつでも歩み寄っていけたらいいな。そんなすぐに近づいていっても嫌がられるだろうし。)
ハヨンは年下の男性と関わることが少なかったので、少し嬉しかった。実は昔から兄弟が欲しいと思っていたのだ。
「うーん、俺たちだけだと大して食料も持ってきていないし、今は冬が近いから食べられそうなものがない…。食事だけは山から下りて店にいくか…?」
すっかり砕けた口調に変化したリョンヘは三人に尋ねる。確かに今は捜索隊を先に還し、手持ちの食料は少ない。非常食としてとっておくべきだろう。
ハヨン達はいつもなら賛同しただろうし、リョンヘもこのように問わず、決定事項として話しただろう。しかし今日はソリャがいた。
「いや、出店でいくつか買って山でみんなで食べよう。まだここは赤架に近いから、長居すると目立つ。」
ハヨンはそうリョンヘに提案した。
(慣れないなぁ…)
人前でリョンヘとこのようなやりとりはしてこなかったので、面映ゆい感覚になる。会話の途中で噛みはしないかと冷や冷やした。
「そうだな…。買い出しに行くのは…ハヨン、ムニル。二人に頼んでもいいか。」
「そうねぇ、昨日騒ぎの渦中にいた二人が買いにいくと鉢合わせしたら面倒なことになるものね。じゃあ行きましょ、ハヨンちゃん」
ムニルはそう言ってハヨンの隣に立って笑った。
「二人とも仲良くね~。」
ムニルは軽い調子で言って、歩き出す。ハヨンは少しだけリョンヘとソリャのことが気になった。結局のところ、ソリャに力を貸してもらうには、二人の関係が重要だからだ。
「心配しなくても大丈夫よ。王子は人と関わることが何よりも好きだし、ソリャも嫌がってる訳ではないでしょう?」
「そうね…。」
ハヨンは実は、心の底ではリョンヘと二人きりで話す時間が欲しいと思っていることを自覚していた。だからソリャが少し羨ましかったのだ。
(だめだめ、公私は混同しないと決めたんだから…)
ハヨンは自分自身を戒めるのだった。