第11章 起点
「そ、それで兄弟みたいなものって言うのはどういう意味だ?」
ムニルがやっと離れてから、そう白虎はムニルに尋ねる。
「私もね、あなたみたいに変わった力を持ってるのよ。うーん、今の季節、服脱ぐのは寒いんだけどねぇ
」
どうやらムニルは体にある鱗を見せようと思っているらしい。襟元をはだけ始める。ハヨンはもう、男の生活にすっかり馴染んでしまったからか、以前にムニルが肌を露にしたときのように慌てたりはしなかった。ただ、白虎には予想外の行動だったらしく、ムニルの姿を凝視したまま、固まっていた。
そして、ムニルの背中が現れる。暗闇で見えにくいので、ハヨンはムニルの背中を灯りで照らし、白虎にも見えやすいようにした。青い鱗がつやつやと光っている。
「どう?わかったかしら。」
「うん…」
白虎は呆然とムニルの背を眺めていたが、そう生返事を返す。ムニルはその返事を聞くと、すぐさま服を着直した。
「うーん、流石に寒いわね。で、あなたはもう一つの姿には変化できるの?さっき腕は変化していたけど。」
「もう一つの姿…?」
ムニルの問いに、釈然としないといったふうに白虎は復唱する。
「多分虎っぽいものになれると思うんだけど…」
どことなく自信なさげにムニルがそう言っているのを聴いて、ハヨンは吹き出しそうになったが耐えた。そして、ますますわけがわからないといった表情をみせる白虎も、どことなくあどけなくて可愛らしい。
(ぽいもの…。まぁ、実際に白虎がどんな姿なのかわかってないしね…)
「もしかして自分が何者なのかわかっていないと、変化できないんじゃないか?それとも年齢的な問題とか…」
二人のやり取りを静かに見守っていたリョンへがムニルと白虎を見比べながらそう言った。白虎は、ハヨンやリョンへよりも幼いように見える。14、5歳といったところか。ムニルはここのここの中では年長だ。
「うーんと、あなたは白虎って言う伝説の生き物の生まれ変わりなの。だから人とは違った力を持ってるのよ。」
「白虎…」
白虎のぼそりと呟いた声は掠れていて、小さかった。目は驚いていて見開かれている。
「ちいせぇ頃に、孤児院で聴いたことがある。国の歴史を習ったときだった…。本当に四獣は存在しているのか?」
その震えた声は白虎の脆さを表しているよに思えた。