第11章 起点
(危険だけど行くなら今のうちだ…!リョンへ様の助太刀をしなければ。)
ハヨンはやぐらの残骸の方へと走り出す。男たちの間をするりとぬけて、リョンヘの前に立った。
「な、何だお前たちは…!」
突然男たちを押し退けて入り込んだハヨンとムニルに男たちは各々の武器を向ける。
「私達はこの方に付き従う者。この方に危害を与えるつもりなら、悪いけれど、阻止させてもらう。」
ハヨンはそう答えて構えをとった。剣なしで戦うのは久しぶりである。
(相手が武器をもって襲ってくるとは言え、相手はみんなリョンへ様の大事な民の一人。今は我を忘れているからこうなっているけど、本当は傷つけてはいけない相手。なら、剣で戦うわけにはいかない…。)
その時、風がハヨンの外套の頭巾をはためかせ、彼女の赤い瞳が燃えるように輝いていることに人々は気がついた。
「お前も化け物か…!これ以上化け物にこの町を乗っ取られてちゃかなわねぇ!お前ら行くぞ…!」
一斉に男たちが走りよってきた。
「二人はとりあえず逃げて!私とムニルで相手をするから…!」
「いや、そんなわけにはいかない、俺も加勢する…!」
リョンは主だからと特別扱いをされることが嫌いな人間だ。そのためにハヨンの言葉を拒否する。
「何を言ってるの…!?まずはリョンも白虎も無事でいないと、今回のこと全部水の泡じゃない!早く行って!」
ハヨンは我を忘れてリョンヘにそう言い放ち、一人の男を投げ飛ばした。
リョンへは少し俯きながら、
「悪い、先に行く。」と囁いて、白虎に声をかけていた。
ハヨンが見たのはそこまでだった。ムニルと夢中になって戦い、隙を見て逃げ出すまでにはかなりの時間がかかったのだ。
「王子と白虎の彼はどこにいったのかしら…」
珍しく髪が乱れているムニルはそう言いながら町を抜ける道を歩く。その道の先には森があり、何か非常事態が起きて、ばらばらになったときはそこに集まると約束していたのだ。
「無事ならこの先にきっといるはずよ」
ハヨンは口の端が血でにじんでいた。
森についた時分にはすっかり辺りも暗くなっており、灯りを持ってきていなければ、何も見えなくなっていただろう。
森の小道に入ると、道の端にリョンへと白虎が並んで座っていた。