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華の剣士 2 四獣篇

第11章 起点


その場から逃げ出すもの、白虎を警戒し身構える者…


まるで白虎がやぐらを壊したかのような反応だった。命に関わる危険なことが起きたとき、その場にみなが危険人物だと思っている者がいれば、当然の反応なのかもしれない。人と言うのは不可解なものはすべて、何か自分以外の者に責任を押し付けるものだ。


「お前…。わざとやぐらを壊したんじゃねぇだろうな?」


一人の男が、作業に使っていた棒を構えながら恐る恐る白虎に尋ねる。他の人は声も出さず、身を寄せ合うようにして白虎とその男を見ていた。


ハヨンとムニルはどうすればよいのかわからず、その場に立ちすくんでしまう。


(今動くと、みんなに余計な刺激を加えてしまって、危ないかもしれない…)


ハヨンは冷や汗を流しながら、リョンへと白虎のいる方へ視線を向けた。


白虎はとりあえず支えている骨組みを下ろそうとする。人並外れた獣の腕だとしても、自身の四倍はあろう長さの丸太を支え続けるのには限界があるのだろう。しかし、白虎が少し丸太を動かした途端に、


「動くな!」


と男が叫んだ。ぴくりと白虎の肩が上がったものの、その後は白虎は言葉の通り丸太を下ろさなかった。


いつの間にか男衆がちらほらと武器になるようなものを携えて男の元に集まる。そして、男が何かを囁くと、やぐらのあった場所を中心にして男衆たちがぐるりと取り囲んだ。



「何か町で揉め事が起こる度にお前が必ずその場にいる…。これもお前の仕業だろう?」


男はもう一度白虎に問いかけた。


「俺は…。俺は何もしてねぇ。この人を助けただけだ。」


白虎の声にはいつものような覇気はなかった。その時、ずっと黙っていたリョンへが口を開く。


「この人が言った通りだ。この人は何もしていない。それは俺が保障する。だってやぐらが倒れた瞬間、やぐらの側にいたのは俺だけだからな。」


そうしてみながリョンヘに目を奪われている隙に、ハヨンはじりじりとやぐらの方へ近づいていく。ムニルもその後についた。


しかし、男たちがいるために、ハヨン達が近づける距離には限度があった。ハヨンはもどかしかった。


(あの時もっと速く動けていたら…!)


自分がリョンヘを助けられたかもしれないし、もっと穏便にすませられるはずだと悔しく感じた。

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