第11章 起点
ハヨンはリョンの時の姿を思い出しながらそう答えた。そう言えばリョンヘの先程のやり取りも、ムニルにだいぶん心を許し始めたからかも知れない。
「ふーん、あの王子には私の知らない素顔がまだまだあるってことね。」
「そういうこと」
きっとムニルも最初はリョンヘとはよそよそしかったものの、最近のやり取りを思い出して思い当たる節がいろいろあったようだ。納得した表情を見せながら、リョンヘの背中を見ていた。
そして三人で路地の右側を曲がったとき、再び白虎に出くわした。
「う、わっ」
先頭を歩いていたリョンヘと白虎がぶつかりそうになる。そして、後ろからやって来たハヨンとムニルを見て、血相を変えて回れ右をした。
「待て!」
リョンへは慌てて白虎の腕を掴んだ。
(…!手荒なことはしたくないけど、白虎と話せる絶好の機会が来た…!)
ハヨンはやっとだと思いながら、リョンヘのもとへ駆け付ける。
「…んな。」
ぼそりと白虎が呟く。
「え?」
よく聞こえなかった。リョンへもそうなのか、聞き返している。
白虎はきっ、と顔を上げ、リョンヘを凄まじい形相で睨み付ける。
「触んな、つってるだろうがっ!」
と、白虎は驚いているリョンヘの腕をはねのけ、走り去っていく。
「あ!待ってって言ってるでしょ!」
ハヨンは白虎の後を追う。どうしたのか、二人はその後をついてこない。とりあえずハヨンだけで白虎を追うことにした。
ここの通りは幸運なことに、白虎でさえもさすがに上れないぐらい建物が高い。そのため、走るだけならばハヨンもなんとか声の届く範囲で追いつくことが出来た。
「どうしていつも私たちから逃げるの?」
少し声を大きくして、ハヨンは白虎に声をかける。白虎は返事をせず、左へと進路を変えた。
「私たち、あなたと話したいことがあるんだけど!」
「…俺は何もねーよ!うるせぇな。俺に構うな!」
前から思っていたが、白虎の口は意外と悪い。
「あのね、私達はあなたに仲間になって欲しいの。」
ハヨンは今までずっと言えなかった、白虎を探している理由を告げた。なぜハヨン達が彼を追っているのか、それだけでも伝えておかなければ、何もの始まらないと思っていたので、その事だけでもずいぶんと気が楽になる。