第10章 形単影隻
「何で俺らがこうやってるかわかってねぇみたいだな?さっきも言ったが、お前はこうやって蔑まれる存在なんだ。」
白虎は自分を組み敷いている少年を睨み付けた。
「ああ、気持ち悪い…。この髪、この目、牙…。何でこんな化け物が人間と一緒に暮らしているのかわかねぇ。それに生意気にも俺たちに食って掛かってきやがって…」
そう言いながら白虎の髪を引っ張った。白虎は首が曲がった痛みと、頭皮に走る鈍い痛みに耐える。そして睨み付けるのをやめなかった。
少年はその態度が気に食わなかったらしい。白虎の頬を平手で打つ。白虎は顔を地面にぶつけた。
「もうやってらんねぇ。俺たちに何も言えなくなるぐれぇやっちまえ!」
他の少年が縄を持ち出してきて、白虎の自由を奪う。白虎は今までにない痛みに、涙が出そうになったが、じっとこらえた。
しばらくしていればおさまると思っていたが、白虎の衣服があちこち破れて、少年があるものを見つけてしまった。
「なんだこれは?」
それは白虎がひたすら隠してきた尻尾だったのだ。少年達が尻尾だと気づいたとき、彼らは一瞬顔を凍らせた。
「…こいつ、本当に化け物だったのかよ…」
その少年達が白虎を忌々しげにみた表情が、後にも先にも、白虎にとって一番耐えがたいものとなるのだった。
そして、白虎はこの孤児院での生活の終わりを迎えたことを知った。それは孤児院という箱庭で生きてきた者にとっては、自分の世界から追い出されると言うことに等しい。度重なる心への負荷に、白虎は壊れてしまったのだった。