第10章 形単影隻
ふと場面が暗転する。そして白虎は孤児院の庭にいた。
(ああ、これは夢か。)
白虎はやっと状況を理解した。しかし、夢と言うものは思い通りにはならない。どうやら昔のことをなぞっていくように進んでいる。
白虎と幼い孤児院の面々は鬼ごっこをしているようだった。白虎は手加減をして走っている。
(もしかすると、今日の昼のあれが夢に影響してんのかな。)
白虎は昼間に自分を追いかけてきた少女と、仲間らしき男を思い返す。自分にあえて関わろうとする者は久しぶりだった。
(まぁ、あいつらも俺の対応に困ったら諦めるだろ。どのみち俺は化け物だ。いつかは誰も寄り付かなくなる…)
白虎はもう何回と繰り返したか忘れてしまったこの言葉を思い起こした。
その時、ちびの一人が年上の連中にいびられているのを見つけた。こづかれたり嫌味を言われている。
(これはあのときの…。嫌だ…。目を覚ませ…!)
白虎はあの日起きたことを思い出してあせる。しかし、どうにもならなかった。夢の中の白虎はその嫌がらせをしている輪の中に割ってはいる。
「ちびをいじめんなよ、またそうやってちびを言いなりにさせるのか?」
白虎は年上の中でも最も上背のある青年の腕を掴んだ。
「別に俺はここでの流儀を教えてやってるだけさ。強い者は弱いやつに従う。それがこの世の理だろう?」
白虎は歯を食い縛って、唸るように言った。その際、腕をつかむ力も強まり、相手の表情が歪む。
「そんなもん、くそくらえじゃねーか。誰が決めたそんな理屈。それぞれ上にたてるもんは違うだろう…!?」
普段ならここの辺りで年上の連中は手を引くはずだった。