第10章 形単影隻
白虎は目を覚ました。
(あぁ、今日もそろそろちび達を起こしてやらねぇと…。あいつらのろいから、どーも年上の連中に目をつけられるんだよなぁ…)
白虎は髪を手で直しながら起き上がる。そして腰の辺りがむず痒かったので、手を伸ばしす。
ふと、白虎は違和感を覚えた。何か人肌ならぬものが触れたのだ。思わず掴むと、悲鳴をあげそうになる。
それは自分の尻尾だったのだ。
(何でだ…!?常談じゃねーよ、こ、こんな動物みてーな…!というか本当に生えてるのか?ちび達の悪戯とか…)
思いっきり引っ張ってみて、本日ニ度目の叫び声をあげそうになった。
(ちゃんと感覚もある…。本当に尻尾が生えてきたのか…?)
時おり孤児院での年上の連中に、自分自身の容姿を化け物、と言われたことがあった。あのときの感覚は忘れられない。白虎はじわりと背中を汗が伝ったのを感じる。
(…とにかく、隠さないと…。本当に化け物なんて知られたら、ここから追い出されちまう。俺にはここしか居場所はねぇんだから。)
白虎はひんやりとする床に足をつけ、自分の小さな箪笥を漁り始める。何とか自分の尻尾が上手く隠れる服を見つける。
(これからはみんなと風呂の時間をずらして…。うっかり水浴びとかしなければばれないな、うん、大丈夫だ)
そう白虎は考えていたが、それではいつまでも隠し通せないのは頭の隅ではわかっていた。
後どれぐらいここにいられるだろうかなど、余計なことを考えそうになって、自分の顔を叩いて戒めた。
(俺の居場所はここにしかない。この場所を守りきらねぇと…)