第10章 形単影隻
彼はある寒い冬の日、孤児院の前に捨て置かれていた。朝早く庭掃除をしようと外に出たわしは、孤児院の入り口においてあった襤褸切れと赤ん坊の声を聞いて、またかと思ったよ。
老人はそうハヨン達に語りだした。
わしはすぐさま赤ん坊を抱いて中に戻った。そして体を温めるためのお湯が沸くのを待ちながら、その子をさすろうとしたのさ。
そして襤褸をとったとき、わしは心臓が止まったよ。
赤ん坊の生え始めた髪が、真っ白だったんじゃ。
町の女にはたまに旅芸人に熱をあげる者もいた。そして旅芸人は大抵、その恋心を弄んだあげく、女を捨て去るなんてこたぁ、掃いて棄てるぐらいよくあることじゃ。
そのせいで一人で身ごもった女は、旅芸人との子を孤児院に捨てたりするのさ。大抵旅芸人は異国からきた珍しい容貌のやつだから、孤児院には赤ん坊も変わった容貌のやつがそこそこいる。じゃがの、真っ白な髪の子なんざ今まで一人もいなかった。
わしは事情を探るのはあとにして、湯が沸いたらすぐに温めて体を綺麗にしてやった。そうして孤児院の新たな一員にしたんじゃよ。
しかし、だんだんと年を重ねて行くごとに、あの子の容姿は異国のものとは説明がつかなくなってきた。
爪や歯の一部が鋭くなる、目も綺麗に輝く銀色になる…
そして身体能力も大人の人間をゆうに越えるようになった。時おりあの子を見て珍しがったやつが、見世物小屋に来ないかと声をかけていた。でも、その頃はまだあの子は、ごく普通の男の子のように、優しくて、年下に頼りにされる、明るい子だったんじゃ。
あの子の色んな者を狂わせたのは、その後の変化が原因だったんじゃろうな…。