第10章 形単影隻
「何だか複雑そうね?王子。」
ハヨンがその後、険しい顔で考え込んでいる横で、ムニルはそう王子に小さな声で話しかけた。
「何がだ?」
「嘘ついたってむだよ。私はしっかり見てましたもんね。ハヨンが白虎の報告してるときのあなたときたら…。まぁ、確かに綺麗な子だったから、ハヨンがあんな表情しててもしかたないけどね。」
ムニルは面白いものを見つけたと言わんばかりに、にんまりと笑った。リョンヘはぷいとそっぽを向く。その耳は僅かに赤かった。
「私は別にハヨンにそういった感情は抱いていない。」
ムニルは本当はますますにやにやと笑いそうになったのだが、すんでのところで顔を引き締めた。
(人前では堅物で真面目な面白味のない王子と最初は思っていたけど…。そうでもなさそうね。)
ムニルはたびたびリョンヘの行動が、普段と違和感があることに気づいていた。そしてリョンヘとハヨンが主従の関係以上に息が合っていることにも。
「まぁまぁ、安心しなさいよ。あなたも綺麗、とはまた違うかもしれないけど、いい男だと思うわよ。」
ムニルはそうやって肩を叩く。
「男のお前に慰められても仕方がないだろう」
と少しすねた表情を見せる。これではハヨンに好意があると肯定しているようなものである。
(この二人がどうなるか…。これから先楽しみね。)
ムニルはちらりとハヨンに目をやった。