第10章 形単影隻
「さっきの話が本当なら、白虎はこの辺りにいますよね…。私、探してきます。」
「そうだな、ここは手分けして探そう。」
ハヨンがそう言うとリョンヘは頷き、ハヨンは南側、リョンヘは東側、ムニルが西側を探すことになった。北側はハヨンたちが先程いた所から、男が叫んだところまでを走ったときに白虎を見かけなかったので、とりあえずは除外する
三人は一斉に駆け出した。
その後姿を誰かが見ていたことも知らずに…。
ハヨンは市のある大通の裏側にある路地を一直線に走る。他に延びている道や物陰等も探すが、人っ子一人いない。もしかすると、裏路地はあんなふうに白虎と遭遇するから、人は怖れて通らないのかもしれない。
ハヨンは十字路を真っ直ぐ進んだとき、何かが後をとてつもない速さで通りすぎたのを感じた。慌てて振り返ると、人影が走っていくのが見えた。
(あれが白虎かもしれない…!!)
ハヨンは慌てて方向転換し、追いかける。
そして、十歩(距離の単位一歩=約1.35m)先に走っている姿をとらえる。目を凝らしてみると、彼の腰の辺りに何かついていた。
(…尻尾…?)
ハヨンはその不思議な姿に目を疑った。しかし、その尻尾らしきものは走るのに合わせて動いている。
そして足音か気配に気づいたのか、前を走っていた人影が後を振り向いた。その時、視線がぶつかり合う。その時、走っている反動で、その人が深く被っていた外套の頭巾が外れた。
(…白、い…)
泥などでくすんでいるものの、彼の肌も髪も白く、あまりの美しさにハヨンは息を呑んだ。と、彼は慌てて頭巾を被り直し、走る速度を速める。