第9章 Episode 8
「天、女の子の扱い上手いよね」
「は?」
「迎えに来てくれたり、今もエスコートしてくれたり」
「それは...あなただから...」
「え?なんて?」
「なんでもありません」
俯きながら言った天の言葉を聞き取れずに聞き返すが、はぐらかさらてしまった。
少し気になるが、エレベーターの扉が開いたため私達はエレベーターを降りる。
「天?それにサクラも...何してんだ?」
「楽...空気読んでくれない?」
「はあっ!?」
「僕はIDOLiSH7のマネージャーに振られた君とは違うから」
「何かムカつくな。俺もついてく」
「は!?なんで!」
天と楽の言い合いに入っていけず黙って見ていると、背後のエレベーターが開く。
邪魔になると思って扉の前を開けると、降りてきたのは龍之介だった。
「あれ、みんな何してるの?」
「...こっちのセリフなんだけど」
「え!?俺はCMの打ち合わせで事務所に来てたんだけど...」
思いがけずTRIGGERのメンバー全員が揃う。
天は大きくため息をつくと、私の腕を引いた。
「埋め合わせはまた今度」
少し低い声で呟かれた言葉に、顔が熱くなる。
カフェで4人掛けの席を確保してから、私たちはレジへ注文をしにいく。
天は紅茶とガトーショコラ、楽はコーヒーとモンブラン、龍之介はコーヒーとサンドイッチ、私は紅茶とシフォンケーキを注文した。
「まさか天がさくらさんと一緒だとは思わなかった。久しぶりですね」
「あの日は龍之介だいぶ酔っ払ってたもんね」
「いやぁ、お恥ずかしい...」
「いいよいいよ、また飲もう」
そう言いながらアップルパイを食べると、これは美味しい。もしうちの事務所にあったら、毎日のように通ってしまうだろうな。
あとは環と一織がいっぱい通いそう。
「そういえばもうじきこけら落としだよね。TRIGGERは順調?」
「色々と苦労はしてますが、本番は必ず成功させます」
「流石だね」
「あなたにも見に来てほしいんですが、予定は空いてますか?」
「空いてるよ。こけら落としは3日とも見に行こうって思ってたし」
それは良かった、と呟き天は鞄から封筒を取り出した。
受け取り、中身を見るとこけら落とし初日のチケットが入っていた。