第11章 終わりよければすべて良し
来世で、とかそういうこと?
なんて頭に浮かんだけれど口にしなくてよかったと後から何度も思った。
遠くからバタバタとけたたましい音が聞こえてきて、それは次第に私達のもとへ近づいてきたのだ。
海面が風で押し付けられたような形になり、その上を見上げると、黒いヘリコプターが空中で停止していた。
「ギリギリ間に合ったみたいですね」
木手くんがヘリを見上げて、小さく笑う。
空を見上げたまま横目で私を確認すると、彼は目を細めて勝ち誇ったようにニッと笑ったのだった。
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ヘリコプターに乗せられて、私達3人は無事に島に到着した。
泣きそうな顔で私達の帰りを待っていた甲斐くんと平古場くんは、ヘリから降りてきた私達に駆け寄って抱き着いてきた。
私と彩夏ちゃんは2人にぎゅっと抱きしめられて思わず泣いてしまった。
生きてまた地に足をつけられたことに心から安堵する。
しばらく口々に良かった良かったと言い合っていたが、呆れたような顔の跡部くんが私達をこっぴどく叱った。
彼はひとしきり怒ったあとに自分の力不足を口にし、すまなかった、と謝罪した。
甲斐くんと平古場くんにはすでに説明した後だったようが、跡部くんは改めてこの仕組まれた遭難の意図を説明した。
「しかし…木手、お前その思い込みの激しさなんとかしろよ。美鈴をスパイだと思っていたらしいな?こいつにそんな高度なマネが出来ると本気で思ったのか?」
「跡部くん、それ何気に失礼な発言なんだけど…」
馬鹿にされたような気がしてムッとする私に跡部くんは鼻で笑った。
「まぁそこまでして思い込んででも、こいつのこと嫌いになろうとしたんだろう?」
「…どういう意味ですか?」
「それでも本心から嫌いにはなれなかったみてぇだな」
「話が見えないのですが」
私の頭を飛び越えて交わされる跡部くんと木手くんの会話。
その内容を理解しようとするも、私も木手くんと同じように跡部くんの真意が分からないでいた。
「お前、見てただろ。あの時、篝火のとこからずっと」
「!」
跡部くんの言葉に木手くんが双眸をかっと大きく見開き、そのまま固まってしまう。
やはりな、と言いくくっと喉をならして跡部くんが笑うと木手くんはムッとした顔で彼を睨み付けた。