第11章 終わりよければすべて良し
「ま、それもお前の勘違いの1つってこった」
意味深な笑みを浮かべて跡部くんはくるりと背を向けて歩き出した。
ちらりと木手くんに視線を送ると、彼はばつの悪そうな顔をして私を見た。
結局一つも彼らの会話の意味が分からないまま、皆が待つ集会場へと向かう。
ここまで大事になってしまった以上、合宿の真意を隠しておくことはできなかった。
謝罪する私達に跡部くんは「こうなるのも時間の問題だった」とため息をつきながら答えた。
「…という訳だ。騙していてすまなかった」
一通り説明し終えた跡部くんに、柳くんやその他数名は気が付いていた、と口にしていた。
これだけ大人数の合宿なのだ。ボロがでないはずがない。
けれど、唯一の大人としてこの場に存在していたのに、自分も、そしてあの2人を命の危険にさらしてしまったことが酷く気にかかっていた。
「まだ、悩んでいるのですか」
肩に置かれた大きな手は優しく私の頭を一撫でして、彼のもとに戻って行った。
「だって本当に死にかけたもの…」
先ほどまで間近に迫っていた恐怖を思い出して、ぶるりと体を震わす私に木手くんは優しげな目をする。
震える体を静めるように、優しく背をなでられ、近づく木手くんの気配に今度は恐怖とはまた違う感情が湧き上がってくる。
「もう済んだことです。それに…あのことがなければ貴方とこうなることもなかった。結果がよければ、それでいいんです」
隣に座る彼は今まで見た中で一番柔らかい顔で。
下ろされたままの髪が彼の優しさをさらに際立たせているようだった。
「…おい、木手、美鈴。イチャつくなら余所でやれ。目の毒だ…」
周りの見えなくなった私達2人の間に影を落として、跡部くんは頭上から言葉を浴びせかけた。
はっとして周囲の視線が私達を突き刺すようにいくつも向けられていることに気が付いて、一気に顔に血が上った。