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ニライカナイで会いましょう【テニプリ/木手】

第11章 終わりよければすべて良し



「木手くん、さ…」

「…なんですか」

「なんで、助けてくれたの?私が溺れた時」

「……目の前で死なれては気分が悪いですから」

「そっか……ありがとうね、助けてくれて」

木手くんの言葉に何を望んでいたわけでもない。
けれどそっけないその言葉に落胆したのは事実で。
お礼を言う声にもそれがにじみ出てしまったような気がして、ちらりと木手くんの顔を盗み見た。

木手くんはなんとも言えない苦しそうな顔をしていた。
私の視線に気づいていないのかボートの床を見つめたままギリと唇を強く噛みしめる。
何もない床を見つめ続ける木手くんに、彩夏ちゃんが何か言おうと口を開いた時。

ガン!と大きな音がして、ボートが大きく揺れた。
いきなりのことにみんなびっくりして体を支える暇のないままボートの床に体を叩きつけてしまう。

「い、いった~…今の何?!」

「何だろう?何かぶつかった…?下からしたよね、ガン!って…」

ボートから少し顔を出して海をのぞきこんだ時、二度目の衝撃が私達を襲った。
再びボートが大きく揺れたが、今度はみんななんとか踏ん張ることに成功した。

「一体何なの…あっ…?」

足に冷たい水の感触がして足元を見れば、ボートの底に小さな穴があいてしまっていた。
先ほどの何かがぶつかった衝撃で開いたのだろうか、少しずつではあるが水がボートに侵入してきている。

「あ、穴が…っ」

2人の視線が私の足元に注がれ、息を飲む音が聞こえた。
足で穴を塞いでみるけれど、水の侵入は止まらなかった。
諦めて入って来た水を片っ端から手ですくってはボートの外に出す。
それがあまり意味のない行為だと分かってはいても、みな手を止めることが出来ずにいた。


「私達死ぬかもしれませんね」


ふいに彩夏ちゃんがはっきりとそう言うものだから、驚いて彼女をまじまじと見つめてしまう。
言葉のわりには彼女の顔に悲壮感はなく、それがまた私を驚かせた。

「…死ぬ前にちゃんと言っておかないと駄目ですよ、二人とも。私には分かってるんですから」

ぽん、と彩夏ちゃんは私と木手くんの肩を叩いて、私達の顔を交互に見やってにこりと笑った。
彼女の言わんとするところを考えあぐねていると、目の前の木手くんが、そうですね、と小さく返事をした。
こほんと一つ咳払いをして、彼が口を開いた。

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