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ニライカナイで会いましょう【テニプリ/木手】

第11章 終わりよければすべて良し



ざざざ、と波が一気に彩夏ちゃんの乗ったボートを沖合へと引っ張っていく。
何か考えるよりも先に体は動き、私はボートを目指して一直線に泳いで行く。

海水を瞬時に吸い込んだシャツやズボンがずっしりと重たくなる。
着衣のまま泳ぐ訓練を受けたのはいつのことだったか――そう思った直後、体が一気に波にさらわれてぐんぐん沖へ沖へと流されていく。

これは、離岸流ってやつだ――。
だから彩夏ちゃんの乗ったボートもあんなに勢いよく流されて――そんなことを冷静に考えていた。

「カレント!?甲斐クン、平古場クン、他の人を呼んで――いや、跡部を探せ!」

「って、永四郎――?!」

すでに遠く離れた岸の方が騒がしくなったけれど、私は波に体の自由を奪われそちらを振り向くこともできず流されるがままになっていた。

ボートにはまだ近づけないでいたが、時折波間から見え隠れする赤い物体は、そう遠いものではなかった。
なんとかあのボートに近づかなければ。気持ちは焦るばかりだった。

どのくらい流されたのだろう、先ほどより波はおだやかになったが、今度は海水を吸って重たくなったシャツが体の自由を奪う。
幸運なことに今日は下に水着を着ている、なんとか服を脱ぐことができないだろうか。

海水に漂いながら服を脱ごうとするが、揺れる波と体にはりつくシャツに邪魔されてなかなか難しい。
急に大きな波があらわれて、意識していなかった私をそれはごくりと飲みこんだ。

ゴボゴボと大きな音とともに口から泡が飛び出ていってしまう。
酸素を取り入れなければ死んでしまう――焦る私だったが無情にも青い空は遠い。
このまま暗い海の奥底へと導かれてしまうのだろうか。

視界が霞みはじめたその時、後ろから力強い腕に抱きしめられた。
その腕は一気に私を海面へと押し上げ、私は大きく息を吸い込んだ。

自然と荒い息をする私を怒った顔で見つめていたのは、木手くんだった。

「馬鹿ですか!」

たった一言、彼は私に言い放った。

「馬鹿はどっちよ!」

私も一言だけ言い返す。揺れる波間でそう長く会話をする余裕はなかったし、考える頭も回っていなかった。

「とにかく俺につかまってください!」

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