第11章 終わりよければすべて良し
ただ、そう願っていただけなのに。
「違う…そんなこと…私は…」
何を言っても届かない。
けれど黙っていられなくて口を開くも、出てくるのは弱々しい言葉で。
それが逆に木手くんの疑いを深めることになった。
「跡部が毒蛇に噛まれた時に一緒にいたのは、あなただけでしょう?いくらでも嘘はつける」
「そ、んな…」
「ずいぶんと手の込んだ計画ですよ、本当に…」
木手くんは一人納得した顔で言うと、静かに目を伏せた。
「いい加減にしてください!これ以上訳の分からないことで場を乱さないでもらえますか!」
鳳くんが木手くんに詰め寄り、今にも手をあげそうになった。
頭に血が上ってしまった鳳くんを冷たい目で一瞥すると、木手くんは襟をつかむ鳳くんの手を振りほどいた。
「…そうですね。ここでいくら言い合っても時間の無駄だ。いきますよ、甲斐クン、平古場クン」
言われて甲斐くんと平古場くんが立ち去って行く木手くんの背中を追う。
ちらりとこちらを見た甲斐くんの顔がすごく悲しそうで、目が離せなかった。
甲斐くんの口が小さく動き、音のない言葉が聞こえた。
『ごめんな』
彼の口ははっきりとそう形作っていたが、それが何に対しての言葉なのか、はっきりとは分からなかった。
3人の後を追うように、彩夏ちゃんも走って行ったが、それを止める気力は私にはもうなかった。
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朝のミーティングであったことを、跡部くんに報告しに行ったのだが、あいにくロッジに跡部くんの姿はなかった。
樺地くんもいないことから二人で連れ立ってどこかへ行ってしまったようだった。
もう私ではどうしたらいいか皆目見当がつかない。
跡部くんに指示を仰ぐしかないと思っていた私はがっくりと肩を落として元来た道を戻った。
跡部くんの所在を誰かに尋ねるわけにもいかず、一人もんもんとこれからのことを考える。
朝の木手くんの言動が嫌でも頭に浮かんで目の端がジワリと熱くなる。
親の仇でも見るような目で私を見ていた。
以前見せてくれた柔らかな顔の木手くんはもう見られないだろう。
何が原因なのかよく分からないが、私は彼の信用を失い、そして嫌われてしまったのだ。
吹き抜けるぬるい風が頬をなで、目の端に浮かんでいた滴をひとつさらっていった。