第7章 『薬』
「…朝のこともあります、やはり今日は部屋でゆっくりしているべきです。俺が部屋まで付き添いますから」
「大丈夫、ほんと大丈夫だから!……1人でいるともっと余計なこと考えそうなの。だから…部屋には戻りたくない、な」
私を抱きかかえようとする木手くんの動きを手で制す。
その行動に木手くんの眉根がぎゅっと寄せられる。
深いため息が私の頭上から降り注ぐ。
「はぁ…強情ですね…。でももし、次に俺達が心配するようなことがあった時は…その時は問答無用で連れ帰りますから、そのつもりで」
「うん…ごめん…」
「謝るくらいなら素直に俺の言う事を聞いてほしいものです」
「…うん。ごめ…ううん、ありがとう、木手くん。…手間取らせてごめん!早く採っちゃわないとご飯抜きになっちゃうね!」
相変わらず私の空元気はむなしく空回っていたが、無理に笑う私にそれ以上みんなは何も言わなかった。
しっかりしなくては、と気持ちを奮い立たせる。
これ以上彼らに心配も迷惑をかけないようにしないと。
分厚い図鑑を開くと、鮮やかな色のキノコが目に飛び込んできた。
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なんとか1日が終わり、どっと押し寄せる疲れの波に今日は眠れそうだと安堵する。
もうすでに瞼は半分くらい落ちかけてしまっている。
さすがにほとんど寝ないままにあちこちに採集に出掛けたり、みんなの食事を作ったりとせわしなく動き回ったら、頭も回らなくなるだろう。
もう何も考えられず、倒れこむようにしてベッドに入った。
うめき声に目を開け、肌にじっとりとはりついたシャツの感触が気持ち悪いと思った。
内容は覚えていなかったけれど、夢にうなされていたようだった。
ついさっき眠りにおちたような気がしていたが、枕元にあったスマホに表示された時刻に、すでに明け方近いことを知る。
窓の外はまだ暗かったが、漆黒というほどの闇ではなかった。
スマホを枕元に置いてもう一度目を閉じる。
けれど意識はハッキリとしていて、再び眠りに落ちそうにはなかった。
外の空気でも吸ってこようか、と木手くんから借りた上着を羽織ってドアに手をかけた。