第7章 『薬』
外がだんだんと白んできて、次第に朝日が窓から薄く差し込んでくる。
結局あまり眠ることなく起床時間を迎えてしまった。
昨日よりもさらに重たく感じる体を無理やり引きずってベッドから這い出た。
寝不足もあいまって頭も体も重かったが、ロッジの外に出て朝の空気を吸えばいくらかマシになるだろう。
若干ふらつく足で、私はロッジの外に出て大きく伸びをした。
「おはようございます。早いですね」
だいぶ耳に馴染んできた木手くんの声がして、おはよ、と小さく返事をする。
「…顔色がよくありませんね。眠れなかったのですか?」
「ん、ちょっとね」
歯切れの悪い私の答えに木手くんは怪訝そうな顔をした。
急に目の前が白くなっていって、私の意思とは関係なしに体が地面へ倒れこみそうになった。
咄嗟に木手くんが倒れかけた私を受け止めてくれたので怪我はなかった。
「ごめ…ありがとう…」
力なく笑う私に、木手くんは困った顔をする。
「無理はいけません。今日は部屋で休んでいた方がいい」
「だ、大丈夫だよ。ちょっとフラッとしただけだから!」
「そうやって無理をして…」
「め、迷惑かけないよ、大丈夫。大丈夫だから、ね?」
無理矢理笑って見せたけれど木手くんはそれで納得しそうになかった。
だけど、このまま部屋で休んでいたって、グルグルと頭の中を訳の分からない感情がめぐるだけなのは目に見えていた。
だったらまだ、外に出てみんなと話したり体を動かす方が精神的にいい。
木手くんの意識をなんとか逸らそうと、思い切って話題を変えることにした。
「あっ、そうだ!木手くんさ、着替え余分に持ってきてない?私、荷物を部屋に置いてきたまま船を出ちゃったから、着替えがないんだ」
「多めに持ってきてはいますが……辻本君達に借りた方がよいのでは?」
至極当然の答えが木手くんから返ってくる。
昨日の袖すらも通せなかった光景が頭に蘇り、少し恥ずかしくなって俯く。
「あー…うん。昨日借りに行ったんだけどね…その…サイズが…きつくって…」
「…そういうことでしたか。いいですよ、いくつかお貸ししましょう。…失礼ですが、その…下着もお貸しした方がいいですか?おろしたてのがあるにはありますが」
「えっ、あっ、下着は大丈夫!」
木手くんの口から「下着」なんて言葉が飛び出して一瞬焦ってしまった。