• テキストサイズ

ニライカナイで会いましょう【テニプリ/木手】

第7章 『薬』



「より戻すはずないでしょうが…バカじゃないの」

そう、思いつつも、メールを開封する手はとまらなかった。
メールに目を通す度に、楽しかった元彼との思い出がよみがえり、あの時抱いていた気持ちさえ胸に舞い戻ってくるようだった。

本当に大好きだった。
卒業したらこの人と結婚するんだって、漠然とだけど思ってた。

「…ありえない…ありえない、よね…」

メールを読むたびに気持ちが大きく揺れる。
あの子とはたった一度の過ちだと、元彼は言っていた。
それが本当かどうかは分からない。

けれど彼女が妊娠することがなかったら、私達はまだあの頃と同じように付き合っていたに違いない。

頭の中がぐちゃぐちゃになって、自分でも訳が分からなくなる。
どくどくと心臓が波打つ音が大きく耳に響く。

震える手でメールボックスを閉じると、首を振って気持ちを持ちなおそうとした。
救いは今、電波が届かない状態にいることだ、と思った。
電波の受信状況を示すマークは×になっていて、そのことにひどくホッとする。

もし、電波が繋がっていたら──?
私はどうしていただろうか──?

頭から消したいと願いながらも、未練がましく消せずにいた彼のアドレス。
もう好きなんて気持ちはないはずなのに、何故消せなかったのか。

忘れたい、消し去りたいのなら、ボタン一つでスマホの中から消してしまえるのに、それができないのは──


ベッドの中で私の目は冴えるばかりだった。

/ 106ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp