第6章 距離
言い置いて、さきほど頭に浮かんだモヤモヤが、再び浮かび上がってくる。
疑い──、そう、木手くんはこの合宿に何か疑念を抱いている。
そしてそれに私が何か関与しているのではないか、と疑っているのだろう。
先ほどの彼の突き放すような態度は、それが表面化したものだったのではないだろうか。
だとしたら誤解をとけば、彼はもう少し私に心を開いてくれるかもしれない。
「…私は純粋に君達を心配しているだけ。見ていてとってもヒヤヒヤするのよ、君達。誰にでもすぐに喧嘩ふっかけるし」
「そういうつもりはないのですが。言葉尻をとらえて突っかかってくるのは、あちらではないですかね」
全くそう思っていないだろうことを木手くんは涼しげな顔で、すらすらと口にしていた。
どこまでも食えない子だ。
「とにかく!今大人は私しかいない状況だし、私はこれからも君達を手伝うよ。監督してないと心配だから」
「余計なお世話ですが…俺達の邪魔をしないのなら、別に構いません。勝手になさってください。おせっかいなあなたのことだ、断ってもやって来るのでしょう、どうせ。」
諦めに近い声で、木手くんは承諾してくれた。
もうこれ以上の問答は面倒だ、と顔にはっきり書いてあった。
木手くんの承諾に心をよくして、ニコリと笑って言う。
「ありがとう、木手くん」
「別に、お礼を言われることではありません。それより、ここはもういいです。さっさと向こうのロッジに行ってもらえますか」
「はいはい、また後でね」
「…勝手にしてください」
投げつけるように言われた言葉も、今は可愛いものだと思う。
相変わらず言葉は鋭いし、態度は愛想ないけれど、そんな彼の様子にも少し慣れた自分がいた。
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人数の関係で、山側・海側で半分に分かれて生活することになった。
海辺の開けた場所に海側の皆で集まり、これからのことを話し合う。
あまり気乗りしていなかった比嘉中の子達も、私が無理矢理引っ張ってきた。
「とりあえず生活に必要なものは大体揃っている。ただ、食糧が問題だ」
生活用品はあるようだったが、主食になりそうなお米や野菜は少ないのだそうだ。
そこで漁や、採集といった方法で自分達で食料を確保することに決まった。