第5章 無人島
「う、うん。大丈夫」
「…つらい時はすぐ言え。…俺でなくても手助けしてくれるヤツはいるから」
そう言うとすぐに跡部くんはくるりと背を向けて、みんなの元へ向かった。
熱帯の植物が生い茂る道を抜けて、みなで列をなして目的の合宿所へ向かう。
道中、立食パーティーで出会った女の子2人と並んで歩いた。
1人は小日向つぐみちゃんという子で、お父さんがあの豪華客船の船長さんなのだそうだ。
もう1人は辻本彩夏ちゃんという子で、つぐみちゃんのお友達だった。
船長のお父さんの心配をするつぐみちゃんと、そんな彼女を心配する彩夏ちゃんと共に歩き、色々と話をした。
周りは男の子だらけでさぞ不安だろうと思っていたが、意外と彩夏ちゃんは「イケメンが多い」とはしゃいでいるようだった。
彩夏ちゃんの明るさに少し救われる思いがした。それはつぐみちゃんも同じなのか、彩夏ちゃんにつられて少し笑っていた。
私も彼女達の強さを見習わなければ、と思った。気丈に振る舞うつぐみちゃんは、少し心配ではあったけれど。
合宿所までの道のりは思ったよりも長く、自然と息が上がる。
周囲の中学生達はさすがに毎日運動しているだけあって、息の乱れている子は一人もいなかった。
自分の体力の無さがうらめしく思えた。
「遅かったですね、みなさん」
合宿所の着くと、ひょっこりと、木手くんが姿を現した。
木手くんは息を切らしている私を一瞥して、視線を他の子達に移す。
一瞬だけかち合った視線が、じわりと胸に痛みを引き起こした。
なんだろう、この胸の痛みはー?
「勝手な行動ばかり取るなよ、木手!」
橘くんがいら立つ声でそう木手くんに言うと、平古場くんが間に割って入った。
「何言ってんだよ。やったー(お前達)が遅いからわったー(俺達)が先にここの状況を調べっとっただけさぁ」
そうそう、と甲斐くんが平古場くんの隣で頷く。
彼らの態度に他の学校の中学生達の神経がピリピリと尖っていくのを肌に感じた。
跡部くんが何か言いかけた時、大石くんが先に比嘉中の子達に言葉を投げかけた。
「それで、先生方はいたのか?」
「いえ、いませんね」
「そうか、それじゃ一体どこに…」
「もう、くたばっちまってんじゃねーの?」