第4章 大脱出
当たり前のようにそう言われ、反論することもできず素直に木手くんの後ろにつづく。
部屋へ向かう道中、木手くんと他愛のない話をした。
沖縄のこと、学校のこと、甲斐くん平古場くんのこと…
思ったよりも色々と話してくれて、少しだけ木手くんという少年に近づいた気がした。
相変わらずきつい言葉も飛んできたが、それにも慣れてきた自分がいた。
部屋の前に付き、木手くんにお礼を言おうと口を開きかけた時、大きな音がして廊下の電気が落ちた。
一瞬あたりが真っ暗になる。
びっくりして思わず木手くんの腕を掴んだ、すぐに明かりはついたのだが、不穏な空気に腕は掴んだままだった。
「び、びっくりした…なんだろう、今の…?」
「かなり大きな音でしたね…雷…?いや、今のは…」
思案顔の木手くんは、確信をもてないのか最後まで言い切ることなく口を閉じた。
雷でないとしたら、先ほどの大きな音は、一体ー。
考えるより先に、体が違和感を覚えはじめた。
「な、なんか、傾いてる…?よね?」
「ええ。それに船が止まっている…では先ほどの音はやはり…」
木手くんの声に緊張が漂う。
みなまで言われなくても、私の頭にも木手くんが思うのと同じ言葉が浮かんでいた。
「座礁…?!」
私と木手くんの声が重なった。
二人して顔を見合わせ、小さく息をのむ。
「ここにいては危険です。とにかく外へ向かいましょう」
「う、うん」
木手くんに手をひかれ、船外へ向かって走り出す。
その途中どんどんと船の傾きは大きくなっていき、バランスがとりづらく足がもつれてしまった。
転びかけて、ぐっと、木手くんの腕を引っ張ってしまう。
「ご、ごめん」
「大丈夫ですか?」
「う、うん、だいじょ…きゃっ?!」
答える前にまた大きな音がして電気が落ち、あたりが真っ暗になった。
思わず木手くんに抱き着くかたちになる。
木手くんは何も言わず、そっと背中に手をまわして私の体を支えてくれた。
今度は先ほどと違って、明かりがつく気配はなかった。
「電源が落ちてしまっては船が沈むのも時間の問題です。少し急ぎますので…失礼しますよ」
「えっ?」