第11章 終わりよければすべて良し
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夜は、彩夏ちゃんとつぐみちゃん、そして私の送別パーティーを開いてくれることになった。
どこから持ってきたのか鮮やかな色とりどりの花があちこちに飾り付けられ、眺めているだけでも楽しい気分になれる。
毎日のように作っていた料理も今回は当事者だからと任せてもらえず、手持無沙汰な私は浜辺へと足を運んだ。
真っ暗になった空と海の境界線は曖昧で、雲間からのぞいた月の光でかろうじて認識できるくらいだ。
ここに来て色んなことがあった。
楽しいことも、辛いことも、短い中で本当に色んなことがあった。
そんな濃い思い出の詰まったこの島を、明日の昼過ぎには迎えに来てくれる船で発ってしまう。
じわりと目の端にあついものがこみ上げてくる。
頬をゆっくりと伝っていくそれを私はただゆっくりと目を閉じて感じていた。
明日、ここを離れる。
それはつまり、木手くん達を始め、少年達との別れをも意味していた。
比嘉と氷帝の子達以外は、ここを離れてしまえば接点もなくなる。
突然の別れに私は急に寂しさを覚えた。
いつか終わると分かってはいたのに、いざその時が近くなると否が応うにも寂しさが胸に募る。
見上げた夜空に浮かぶ満天の星々の煌めきに、一つ一つ少年達の顔が浮かび上がる。
一際輝く大きな星に浮かぶのは、やっぱり木手くんの顔で。
「…ダメダメ、笑ってお別れしなきゃ」
大きく息を吐き出して、一緒に寂しいと思う気持ちを胸から追い出した。
いつまでも下を向いてめそめそしてはいられない。
背中から届いたパーティー開始を告げる声に、私は大きな声で返事をして会場へ向かった。
会場に並べられた色とりどりの料理が目に飛び込んでくる。
山側も海側も一緒くたになって、以前船内で目にしたのと同じような争いを繰り広げながら、みな賑やかに時を過ごしている。
色んな子達が話しかけに来てくれて、転任する先生の気持ちってこんななのかなぁと思う。
短い間だったけれど個性豊かな彼らと過ごした時間は私の人生の中でもかけがえのないものになるにちがいない。
けれどそこに私の待ち望んだ彼の姿は現れることなく、パーティーは終わりの時間を迎えた。
共に過ごせる時間もあと僅かだというのに、どこに行ってしまったのだろうか。
胸元で小さく揺れるオレンジ色を見つめてぼんやりと彼のことを思った。