第11章 I miss you〜SJ〜 5
「ありがとう、カズ…ごめん」
「俺こそ、ありがとう、潤くん。最後にキスぐらいしたいとこだけど…煩そうだしやめとく」
「ふふふっ、しちゃう?」
「バカ、お前も、しちゃう?じゃねーよ。そこは全力で拒め」
「心の狭い人は嫌われるよ」
「うるせぇ、狭くて結構、もう触んな」
不機嫌そうにブツブツ言ってる翔君が可愛くて笑ったら、頬にふわっと何かが触れた。
「あーお前触んなって言っただろ」
「頬っぺにチュ、ぐらいこれからもするし〜。ライブ中だって収録中だって、俺みたいに潤くんに近付けない翔さんには無理だろうけどね〜ザンネーン」
「あーマジでウゼェ、もう帰るぞ、潤!」
「え?あ、ちょっと」
「お支払いはよろしくね」
立ち上がって隣へと回り込んできた翔君に腕を引かれて立ち上がった俺に、スマホを弄りだしたニノが手を振る。
「車で来たから、お前も乗ってくか?」
「んふ、今すぐにでも潤くんを抱きたいって顔してんのに、俺を送ってたら時間無くなるよ?これ以上嫌がらせする気は無いし、そんなおじゃま虫な事しないって」
「そんな事ないし…カズ、乗ってきなよ」
「もう車呼んだから平気〜。ねぇ、潤くん。今まで俺に言ってきた事や不安な気持ちとか、全部ちゃんと話して…今度はちゃんと向き合って、幸せになりなよ」
「カズ…」
優しい優しいニノの目に、また瞼の奥が熱くなる。
「はいはい、翔さん。潤くんの心が俺に傾く前に連れてった方がいいですよ〜」
「傾かねーよ!行くぞ、潤」
「うん…」
それでも部屋を出て行った翔君を直ぐには追えなくて…
「潤くん、置いてかれちゃうよ」
「カズ……ありがとう」
そうとしか言えない俺に、カズが親指を立てる。
「もう俺の事は気にしないでいいから。素直になって、たくさん翔さんに愛されて……幸せに、なって」
「うん…」
「じゃあ、また収録で」
「じゃあ、またね」
手を振るニノに手を振って、先に行った翔君の後を追う。
翔君に追いついた時には会計は済まされていて…
俺が追いついたのを横目で確認した翔君が、俺を待たずに歩き出した。
その背中は…
怒ってる?