第11章 I miss you〜SJ〜 5
「あの、会計…後でちゃんと払うから」
その後ろについて俺がかけた言葉に返事はなくて…
そこから地下にある駐車場まで無言で歩く。
「あの」
「ベルト締めろ。出すぞ」
「うん…」
俺がベルトを締めたのを確認して、翔君が車を出す。
その横顔からは翔君の感情は読めなくて。
こんな風に、迎えに来させられて…あんな風に責められて…
気分良くは…ないよね…
「別に怒ってるとかじゃねーから。ただ、こんなとこじゃ、どこで誰が張ってるか分かんねーから。お前を抱き締める事もキスする事も出来ないから、話は家に帰ってからで、いいか?」
「……うん…」
チラリとだけ俺に向けられた翔君の目が優しくて…
怒ってるんじゃないって安心したら…やっぱり触れたくて…
シフトレバーに置かれたその手をそっと握りしめた。
「こら」
「ここなら、写らないでしょ?」
「俺がデレるから、ダメなんだよ」
その言葉通り、少し緩んだ翔君の表情に笑ってその手を引こうとしたら…
その手を逆にグッと握られた。
「表情引き締めとくから、やっぱ繋がせて?」
「うん…」
手を繋ぐなんていう行為より深い、それ以上のことをした事もあるのに…
なのに、繋がれた手が熱くて。
表情を引き締めておかないといけないのは、俺の方、だよ。
きっと、今写真を撮られたとしたら…
翔君が好きで好きで堪らない
っていう、この想いが隠せない写真になっちゃうだろうね。