第11章 I miss you〜SJ〜 5
「正直、俺はお前みたいに潤の気持ちを読んで、常に潤を幸せな気持ちでいさせてやるのは難しいと思う。それでも…そんな俺を潤が選んでくれるなら、俺なりの精一杯で、今度こそこいつと向き合って、大切にする」
「そうだよねぇ、絶対俺の方が、潤くんの心を穏やかに包めるのに…ね」
そう言って、翔君に向けていた強い眼差しを緩めて俺を見たニノが、ふわっと微笑んだ。
「バカな子ほど可愛いって言うし…それでも潤くんにはバカな翔さんが、一番なんだもんね」
「バカは余計だ」
「だって、バカでしょ?失わないと潤くんの大切さに気付けないんだから」
呆れたように言い返したニノの言葉に翔君は返事に詰まる。
「ただ真っ直ぐに翔さんだけを愛していたあの頃の潤くんは、翔さんが絶対だった。その後だって…ずっとずっと、潤くんにとっては翔さんは絶対の存在で、何をされたって結局離れられないって、俺も分かってた。それでも、そんな潤くんの想いが痛々しすぎて…」
そこまで一気に言ったニノはグッと唇を噛むと、翔君を睨みつけた。
「二度目は、ないよ。今度もし翔さんがバカな事したら、潤くんが俺に泣きつく事があったら、今度こそ俺が奪うから」
「分かってる」
「……って言っても、そもそもが鈍感バカ男だから、潤くんが泣く事はこれからもありそうだけどね〜。だから…」
ガラッと口調を変えたニノが俺の頬に手を添えた。
「また元の関係に、戻ろ?潤くんが泣きたくなったら、いつでも聞くから…だから、俺に遠慮して、無理しないで、ね」
「うん…」
「だから泣かさねぇ、って」
「無理でしょう。翔さんに乙女な潤くんの機微が全部読めるとは思えないし」
肩を竦めてそう言われて、翔君がまた答えに詰まる。
「あー悔しいなぁ。ニノちゃんの方が絶対にお買い得なのに」
「ふふっ、そうかもね」
「おい、潤!」
「それでも、そんな器用じゃないしょーくんが、俺は好きなんだ」
「うん…知ってるよ」
笑ったニノに、同じ様に笑顔を返す。
こんな勝手な俺の心配をして、幸せを願ってくれるニノだから…
だからこそ、翔君を選ぶと言うなら、俺がちゃんとそう言ってけじめを付けなきゃいけない。
ニノの事は大好きだけど…
それでも、選べないんだから。