第11章 I miss you〜SJ〜 5
「カズ……大好きだよ」
「んふ、知ってる。でも、ね、翔さんを選ぶって決めたなら、ダメだよ、もうこんな風に抱きついたら。翔さんはああ見えて嫉妬深いし。それに…ね、俺も諦められないでしょ」
「うん…」
「だから、これが最後、ね」
そう言って緩く笑ったニノにギュッと抱き締められて、止まった涙が再び溢れ出した。
こんな酷い事をしている俺を優しく抱き締めてくれる腕が…
何度も俺を癒してくれたこの存在が…
やっぱり、俺は大好きなんだ。
翔君への想いとは違った感情で…本当に、本当に…大好きで…
「ありがとう…カズ…」
「忘れないで?俺はやっぱり、潤くんが大好きだから…もし翔さんと何かあったら、いつでもね、その後釜狙ってるし、いつでも待ってるから」
「それは、潤への告白って言うより、俺への宣戦布告だろ?」
突然聞こえた声に、ニノの腕から顔を上げて…
そこにあったのは、不機嫌そうな顔で腕を組んでいる翔君の姿。
「なんで…?」
「俺が呼んだの。潤くんが酔っ払って可愛い事になってるから、このまま最後の想い出に貰っちゃおうかな、って」
「ったく、無防備に酔わされやがって」
「ご、めんなさい…」
俺とニノの前に乱暴に座った翔君が、空になったワインのボトルを持ち上げてため息を吐いた。
「俺を呼んでくれてありがとう、ニノ」
「翔さんの返答次第では、このまま俺が持ち帰るけどね」
「……何?」
ニノの鋭い眼差しが翔君を真っ直ぐ見つめて…翔君もその視線を真っ向から受け止めていて…
「今度こそ、潤くんの手を離さないって、誓えるの?潤くんだけを愛して…大事にして…自分のプライドを捨ててでも、潤くんを抱き締める、って、言える?」
苦笑した翔君がニノから視線を逸らし、まだワインが残っていた俺のグラスに手を伸ばして、それを煽ろうとして止めて…
「……マジで凄いよな、ニノは。多分…俺なんかより俺と潤の関係が見えていて、俺なんかよりずっとこいつを幸せな環境に置けるんだろう」
クルクルとグラスを回して、揺れる紅い液体を見ながら呟いた翔君は、再びニノへと視線を向けた。
何かに迷うようにグラスを回していた時とは違い、その眼差しはとても強くて…
俺が大好きな
櫻井翔
の目、だった。