第10章 back again〜SNJ〜2
ありえないって言ったその言葉に自分で苦しむ様に眉間にしわを寄せ、唇を噛む翔君。
「ありえなくて、当然だから…だから…いいんだよ、しょーくん…」
その表情があまりに苦しそうで、でも何て言えばいいのかも分からなくて…
ただ、その表情を和らげたくて、頬に伸ばした手を掴まれ、その胸に引き寄せられた。
「お前がニノのもんになって、二度と俺を見ないんだって現実に気付いた時……初めて、怖いと、思った」
今までだって、抱き締められた事がないわけじゃない。
でも、こんな不安げに…
強い力なのに壊れ物を扱うみたいに抱き締められたのは初めてで…
微かに震えているその体に、そっと腕を回した。
「ニノを選ぶって決めたら、きっともうお前は俺を振り返らない。俺を見る事も、なくなる。そう思ったら、堪らなく怖くなった」
「うん…」
「でも、言えなかった。お前に…そんな弱い自分見せたくはなかったし……プライドが、許さなかった。お前の前では、格好いい翔くんでいたかったんだよ。情けなくすがる姿なんて…見せたくなかったんだよ」
抱き締められているのに、まるで俺が抱き締めているような…
その体を震わせて語る翔君は、確かに俺が知っている翔君じゃない。
でも、そんな姿に幻滅するわけでもなく…
それどころか、そんな翔君が愛しくて…守りたいって思って…
あぁ…
翔君も…ニノも…
俺が愛した人たちは、どうしてこんなにも愛しい存在なんだろう。
「潤…今更でも、何でも…お前が誰を愛していても…俺は、お前を、愛してる」
生まれて初めて聞く翔君からの真っ直ぐな愛の告白に、止まったはずの涙が溢れ出す。
ずっと、ずっと…
出会った時からずっと、その想いを求めていたから…
まるで夢のようで、嬉しくて。
でも…
俺には…
翔君の腕から顔を上げて振り向くと、優しい顔で微笑んでいるニノの顔がそこにあった。
「カズ…」
「大丈夫だよ、潤くん。潤くんの気持ちがどう変わろうとも、潤くんを愛している気持ちに、変わりはないから」
そう言って今度はニノに抱き締められて…
その腕の中も、俺が安心できる大切な場所で…
「俺は…」
俺は…
二人とも、失いたくない。
でも…
そんなワガママを言っても…いいの?