第2章 声を聴かせて〜NJ〜
「潤…ほら、もっと締めろよ…そう…上手だ」
「しょ…ぉく、ん…お、れも…まえ…」
「あぁ、もう俺もイきそうだから…いいよ、自分でやっても」
求められるがままに中で翔君を締め付けつつ翔君にそう言って…
返された言葉に我に返って、思い出した。
翔君が俺のモノに触る事はない、って事を。
女にはないこれは、男を抱いているって自分に知らしめるものになる。
それが理由かは分からないけど…
翔君はいつも俺を後ろから抱いたし、俺のモノに触れる事はなかった。
(潤くん…気持ちいい?)
ニノが当たり前の様に俺のモノを触っていたから…そんな事も、忘れていた。
(ここ…気持ちいい?)
常に俺が気持ちいいかを伺って、一緒に快感を得ようとするニノの抱き方に、いつの間にか俺は慣れてしまっていたんだ。
「いいよ、潤…一緒に…な…」
「ふっ…んっ…」
一緒にイクっていうのは、翔君の動きに合わせて俺が自分で弄ってイクって事。
それが当たり前だったのに…
なのに今の俺は、それを寂しい、って思っている。
抱き合いながら…
その顔を見ながら…
唇を合わせながら…
相手の体温を感じながら抱き合うだけで、快感は数倍になるって事を…
俺はニノと抱き合って、初めて知ったんだ。
翔君のことが好きだったから…
大好きだったから。
だから、気付かなかった…
気付きたくなくて、ずっと見ない様にしていた、事実。
そう…
ずっと、ずっと…
翔君と俺との行為には、相手を想って二人で得る快感なんてものは、なかったんだ。
「やっぱり、お前ニノの手垢つきまくりだな。暫くは俺が抱いてやるから、ニノとはやめとけよ」
「俺…帰る、ね」
「おい、潤。返事は」
当然俺が喜んでその言葉に返事すると思っていたんだろう。
翔君の声に不審の色が滲む。
そりゃ…
そうだよね。
別れを告げて、俺の気持ちはお構いなしに関係を終わらせて…
でも、女と別れる度に抱きに来て、そして俺もそれを喜んで受け入れて…
そしてまた関係を勝手に終わらせられて…
でもまた戻ってきたら喜んで受け入れて…
そんな都合のいい奴だった俺が、翔君の言う事に逆らうなんて、思わないよね?