第10章 back again〜SNJ〜2
「……寝る時間がないだけだ」
「食欲だって落ちてるじゃん」
「もう直ぐクランクインだから体重コントロールしてるだけだ」
「そんな落とす役だっけ?」
「もう絡むなって、ニノ」
笑いを含んでいる声だけど、でもその声には微かな苛立ちが混ざっている。
見えないからこそ、よく分かる。
その声には、明らかな苛立ちと疲れが混ざっていて…
「しょーくん…」
「…んだよ」
「疲れてる…の?」
声だけだから、余計に分かる。
その声に余裕がない事も…疲れと…苦しみが、混ざっている事も。
「ねぇ、潤くん。今の翔さん、酷いよ?キラキラオーラも無いし、振られて落ちぶれたおっさんみつぃ。あぁ、これも役作りかな」
「……あぁ、冴えない医者役だからな」
「じゃあ潤くんに感謝しないとね。そんな風にしてくれたの、潤くんでしょ」
「いい加減にしろよ、二宮」
低くなった翔君の声は、翔君が本気で怒っている証拠。
それでも、そんなピリピリした空気なのに、部屋にはニノの笑い声が響いた。
「いい加減にするのは、翔さんの方じゃない?いい加減、認めたら?潤くんが好きなんでしょ?あんだけ好き放題して、潤くんに俺様してたから、今更追い縋れないだけで、好きなんでしょ?」
「殴られたいのか?」
「殴りたいなら、どうぞ?これで怒るっていう事は、俺を殴るって事は、それが事実だから、だしね」
「ちょっと、もう止めてよ!ニノ、馬鹿らしい事言ってないで、もうこれ取れって」
ニノの真意が分からなくて…
信じてって言ったくせに、まるで俺を翔君に返すような、そんな態度で…
何が何だか分からなくて…
その時、唇に温かいものが触れ…そして唇を押し割って中に入って来たのは…ニノの…
濡れた音が響いて、その優しい唇が、舌が
潤君を愛してる
って言ってて…
でも…じゃあ、何で…
唇が離れた瞬間溢れた涙を吸い込んだアイマスクが、フワリと取り去られた。
「もう関係ないなら、どうでもいいなら、何で翔さんはそんな顔をしてるの?」
ニノの言葉を聞いて、その視線の先を追って…
そこには…
(俺がお前を愛したら、お前は帰ってきてくれんのか?)
そう言った時と同じ様な、今にも泣き出しそうな顔をした翔君が立ち尽くしていた。
何で…
そんな顔…