第10章 back again〜SNJ〜2
「な、んで…」
「何でって、その人がいない場所でその人の話するのは、フェアじゃないでしょ。だから、俺が呼んだの」
呼んだって…意味分かんないし。
「何考えてんだよ。早くこれ、取れよ、取れって」
「へぇ、ニノにはそんな風に言うんだ、お前」
「翔さんには従順そうだもんね。でもこんな感じだけど、中に入ったら可愛くなるから、そのギャップが俺にはいいんだけどね」
二人分の笑い声が聞こえるこの状況が現実に思えなくて…
夢なら早く覚めて欲しいと思う。
「ねぇ、翔さん。で、どうするの潤くんの事。諦めるの?」
「なに、返してくれんの?」
「返しはしませんよ。今のあなたに返したって、潤くんは幸せになれないもん」
「無理強いは趣味じゃないんでね」
俺を置き去りで繰り広げられる会話。
一向に覚める気配のない夢に苛立ち、唇を強く噛んで…
その痛みに絶望する。
「ダメだよ、潤くん。唇、怪我しちゃうから」
「カズ…夢じゃないなら、何なの、これ」
俺の唇に触れる指も、その声も、いつものまんま優しいもので…
だからこそ、この状況の意味が分からなくて、洩れた声も掠れた情けないものになる。
「大丈夫だよ、潤くん。俺が一番潤くんを愛してるって事に変わりはないし…だから…信じて?」
耳元でそう囁かれ、髪を撫でられ、優しく唇に唇が触れて…
こんな状況なのに、その言葉を信じようと思う自分がいた。
ただの現実逃避かもしれない。
でも…ニノが、俺のためにならない事はしないと、それはやっぱり、信じられるから。
だから怖いけど…信じてみようと、思った。
「おい、二宮。イチャつくなら俺が帰ってからにしろって。見せつけんのは、もういいだろ」
「帰ったら、終わりだよ?本当に、いらないの?」
「お前、俺への腹いせにしても、マジでしつけーぞ」
「翔さんだって、潤くんの手を離してから、寝れてないくせに」
ニノの言葉に、翔君が返事に詰まったのが見えなくても分かった。
翔君が…寝れてない?
あの日から、俺も忙しかったし、翔君の顔自体、真っ直ぐ見る事も無かったから…
今、翔君がどんな顔をしているのかも、分からない。