第10章 back again〜SNJ〜2
「ねぇ、潤くん。俺、言ったよね?もしその想いが捨てられなかったら、教えて、って…」
(人の心って自由になるものではないから。もし…ね、潤くんが翔さんへの想いも捨てきれなかったら、その時はちゃんと教えて?)
そうニノに言われた時は、そんな事はないって答えたのに…
「この間だって…無意識だったでしょ?潤くんも、翔さんだって、きっと、そうだった」
「この間?」
「ほら…ね…」
きっとニノが言っているこの間、っていうのは、あの楽屋の事ではないと思うし…
「潤くんのドラマ撮影がハードだっていうのは、俺も知ってたんだよ?でもあんな風に、翔さんみたいに庇う事は、出来なかった。翔さんの指示を見て、合わせる事ぐらいしか出来なかったんだ」
「もしかして……でもあれは、別に…」
きっとニノが言っているのは、レギュラー番組での話。
俺は別に、じゃんけんに負けたらやるつもりだったけど、翔君が同じの出せって指示出すから…
「目と目で通じ合う〜ってね」
「だから、何?俺が好きなのは、カズだし」
「あの時は何もないってって言ってたけど、何かあったんでしょ、あの時の楽屋でも、翔さんと」
「何もないし」
もう一度打ち込まれたジャブに今度はちゃんと答えを返す。
「そっか」
あの日の柔らかな笑顔が浮かぶ、あの日と同じニノの返事。
「ねぇ、カズ。もう機嫌直して、これ取って、手も外してよ。ちゃんと、話そうって」
「んふふ、イヤ」
「マジでキレんぞ」
「じゃあ、もう一回だけ、聞くよ?俺と翔さん、どっちが好き?」
「カズ」
今度は間髪入れずに返事を返した。
もう、こんな不毛なやり取りは嫌だし、ニノの真意が何か分からないけど、これ以上深く入ってこられたら…見たくない部分まで掘り起こされそうで…
そんなの、もう嫌だ。
「じゃあ、翔さんに何を言われても、揺れない?好きって言われても、愛してるって言われても」
「揺れないよ」
まずそれ以前に、翔君がそんな事を言う訳が、ない。
「だって、翔さん。どうすんの?」
明らかに俺に向けてではないニノの言葉。
そして…
「どうするって、なぁ」
聞こえて来た…
ここに居るはずのない人の…声。