第9章 back again〜SNJ〜
泣くな。
こんな事で…泣くな。
俺はニノを選んで、だから今更翔君の俺への想いがどうかなんて、関係ないじゃん。
そもそも、そこに愛なんてない事…分かってたんだから。
「おはよ〜」
元気よくドアを開けて入ってきたのは、相葉君。
「まだ翔ちゃんだけ?」
「あんま騒ぐなよ。奥で松潤が寝てるから」
「あっ…ごめん。撮影、大変そうだもんね」
寝てなんかいないけど、そっとしておいて貰えるなら、その方が都合はいい。
「おはよ〜」
「うぃ〜」
暫くして、ハモる様に聞こえた声は…
ニノと…大野さんの、声?
「一緒だったんだ」
「偶然駐車場で」
「何言ってんだよ、カズ。昨日は熱い夜を」
「馬鹿な事言ってると、釣りに夢中な時に海に突き落とすよ?」
「おぉ、一緒に愛の海へ落ちよう」
「相変わらずニノと智くんは仲良いね」
少し笑いを含んだ翔君の声が耳障りで…
自分の体を抱き締める。
あんなの、いつもの大野さんの嫌がらせで、翔君はそれを面白がって広げようとしているだけ。
気にするだけ馬鹿馬鹿しい。
そう自分に言い聞かせながらも、体を抱き締める手に更に力がこもった。
「潤くん…?」
強張った心に届いた、ニノの優しい声。
そう…
俺は、この声を信じてたら、いいんだ。
翔君に動揺させられた自分も…
大野さんにかき乱される俺も…
いらない。
「ニノ…」
「撮影、大変?」
「ん、まだ平気」
そう返事して起き上がった俺の目に映ったのは、柔らかなニノの眼差し。
それだけで、止まったはずの涙が溢れそうになって、またギュッと目を瞑った。
胸が苦しくて…
色んな感情が苦しくて…
自分の感情が訳わかんなくて…
でも、そんな俺の感情全てを
分かってるから
って包み込む様に、ギュッと抱き締めてくれたニノの腕に、ポロリと涙が溢れた。
「ごめん、カズ…」
その耳に届くか届かないかの小さな声でそう言った俺の背中を、ニノが宥める様にポンポンと叩いてくれた。
「明日、撮影午後からだったよね。家、行っていい?」
ニノの優しい囁き声に、小さく頷いた。
俺は…
ニノが、好きだよ。
ニノが…好きなんだから…